2008-01-01から1年間の記事一覧

西洋建築史06/アーチ系技術の展開〜ローマからビザンチンまで

古代ローマの建築生産上の大きな特徴はコンクリートを大々的に用いたこと。ポゾラナ pozzolana と呼ばれる土(火山岩が砕けてできたもの)に、石灰と水を混ぜ、骨材として石や煉瓦の砕いたものを加えて突き混ぜれば水中でも凝固する。で、この話をすると服部…

全体ミーティング

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今日はDのK君、M1のM君、M2のHさんの3人が報告。 そんでHさんの発表で川添登氏のメタボリズム論に眼を開かれた気がした。いかに私の理解が薄っぺらであったかと恥じ入る(いやたんなる不勉強か)。川添氏はインフラストラクチャを否定して、ひとつひとつの住…

[classJAp]先週末(土曜日)の夜遅くに古建築実習から帰還。翌日は赤坂の坂倉事務所にて1日中缶詰。その翌日は大学の学科主催シンポジウムなどとバタバタしながら、今年も何とか科研申請書を書き終え、原稿もひとつやっつけた。陳正哲さんとの共同執筆で、今…

これでもかと定番日本建築を見続ける日々。 〜古建築実習中間報告〜

明治大学建築学科には、堀口捨巳先生がつくった「古建築実習」なる科目があり、4年生の希望者を連れて6日間の旅に出る。僕は今年初体験なので頑張って予定を開け、10月27日(月)〜11月1日(土)のフル参加。奈良にはじまり京都南部を一瞥して、4日目の今…

都市史特論04/計画された都市から、生きられた都市へ

1023 まずは都城論のおさらいから。 (1)コスモロジーは天〜身体の相似学であり、都市にもダイアグラム的形態を要求する。 (2)儀礼は群衆(知覚する身体)に対して皇帝の権威を表象するバロック的空間演出を要求する。 (3)機能、つまり皇帝・貴族・官人らをそ…

全体ミーティング

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修論3本。ようやくそれぞれの目標が具体的に見えるだけの作業をしてくれたなという感じ。それから先行研究のレビュー報告がちらっとあったので、それらをきちんと評価しつつ、それに対して自分の研究がどこに位置するかを示さないとダメよと言うと、皆が「そ…

西洋建築史05/市民生活の空間〜ギリシアとローマ〜

メソポタミア以降の古代オリエント世界とその蓄積の上にある古代ギリシアの何が違うか。前回は構法と表現の問題を軸にしたが、その観点からみると、壁で囲われた内部の列柱ホールという構成(ペルセポリスの百柱の間みたいなもので、のちに古典期モスクにも…

「違和感はなかったですね」〜北村氏インタビュー〜

1018 午後、西荻窪のご自宅に元・坂倉建築研究所の北村修一さんを訪ねた。渋谷の東急会館(1954竣工)・東急文化会館(1956)、難波の南海会館(1957)を担当された方(そして例の東名高速のトールゲートも!)。何と3時間半にわたって、人なつこい笑みとと…

都市史特論03/理念型とその移植をめぐって〜東アジア都城論の構図〜

1016 前回は北京を散歩しながら中国都城の空間概念を単純化して取り出すことを試みた。今回はそこに意味(宇宙論的な意味)を充填する作業。しかし意味といっても、何か突然に深遠な世界に入り込んでしまうと考えない方がよいのではないかと僕は思う。簡単に…

全体ミーティング等々

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1015 全体ミーティングはM2修論ではF君の台湾調査報告、Mさんの築地都市人類学、そして今日の収穫はM1のH君がかなり塚本都市建築論の読み込みを深めていること。ちょこちょこ書いているように、最近R・ヴェンチューリが思いのほか面白いことを再発見してい…

西洋建築史04/組積系と軸組系〜オリエントからギリシアへ

1015 メソポタミア、ペルシア、エジプトなどの古代文明にみられる建築物をみてゆくと、石という同じ材料がいくつかの構法とその複合という高度な水準にまで高められていくのが分かる。構法、正確には構法の術 art of construction とでも言うべきかもしれな…

渋谷資料調査

大学院生3人のチームをつくって渋谷を調べている。もうちょっと言うとターミナル駅複合体がいかにaccommodatingかつvestigialなプロセスによってつくり上げられてきたかを検証したいと思っている。お察しのとおりブログのタイトルにも重なるテーマ。これはヴ…

西洋建築史03/都市の誕生〜メソポタミア〜

前回の主題は、新石器革命による「建築の誕生」だった(ただしそれは、洞窟から出たヒトが、地上に資材を積み上げたり結び合わせたりして建物を構築しはじめたことを意味するのであって、「建築 Architecture」概念の誕生はまた先の話題)。メソポタミアのギ…

都市史特論02/都城1:北京〜中国的空間構造の把握〜

きわめて単純な話。第1に中国世界は長城から皇帝の玉座にいたる幾重もの入れ子状の囲い込み構造をもち、都城はこの構造の核心部をつくること。第2に都市を埋め尽くす建物がビルディングタイプを超えて(宮殿からモスクまで)四合院的な囲い込みユニットによ…

西洋建築史02/先史時代の建築〜非対称世界への旅立ち

ヒトの革命にはいろいろあるが、 (1)「心の革命」(5-6万年前。脳の革新) (2)「新石器革命」(約1万年前。農耕のはじまり) (3)「モーセの革命」(約3千年前。一神教の発明) の三つを置くと、建築の歴史も理解しやすいように思う。長い長い旧石器時代の末…

『ソウル学研究』に掲載

ソウル市立大学ソウル学研究所の論文集 “The Journal of Seoul Studies”32号(Autumn,2008)がソウルから届きました。下記の拙論が掲載されています。 Akihito AOI, "Shinto Shrines and Urban Reconstruction of Seoul : Focusing on Chosen Jingu" 昨年12…

巨大な家

こんなわけで、昨日、私の自宅にもほど近い新百合ケ丘の住宅地にSさん父子をたずねてインタビューをした(9月28日日曜日)。1960年頃までは山林と水田と畑の混じる丘陵地帯であった場所が、みるみるうちに見渡す限りの住宅地へと変貌していったプロセスを聞…

“行き詰まり支援型”研究症候群(?)

0926Fri. 大学院の研究中間報告会が開かれた。計画系のM2とDが対象で、約40名の研究を1日がかりで発表+討論。うちの研究室がトップバッターだったので、先生方の突っ込みに苦しむ院生たちをみて僕も苦笑したり援護したりするドキドキの時間からは間もなく…

都市史特論01/イントロダクション

0925 大学院の都市史の授業。今年開講。 今日は院生たちの知識レベルをテストしようと、15枚のスライドを用意して、その映像がどの都市に関するものかをあてるクイズをやった。授業は日本都市史のプログラムになっているが、スライドには(日本の都市と何ら…

西洋建築史01/イントロダクション

後期の授業がはじまっちゃいました。 0924 今日は「様式」、「建築史/住居史/都市史」、「ハイ/ロー・アーキテクチャ」、「西洋/東洋」といった言葉についてあまり意味のない固定観念に縛られるのはやめようという話と、「先史/古代/中世/近代」とい…

トウキョウ建築コレクション 全国修士設計論文集 とどく。

3月に論文の部の審査+討論に参加させていただいた「トウキョウ建築コレクション」が本になりました。 華々しい設計の部のページのうしろに、ちゃんと出ていますのでお見逃しなく。 準備から出版まで、この企画に携わった皆さんに感謝。とても楽しい会として…

いろいろ動き出す。

0905(金)、日本建築学会のアジア建築交流委員会の第1回会議。2010年秋に日本のどこかで第8回アジア建築交流シンポジウム(8th ISAIA)を開くのだが、そのための検討準備に入った。学会外交儀礼の演出という点では日本はてんで弱い。実質的な面白い議論を…

こんなところに紹介

台湾の建築系ウェブマガジンMeta magazine : Archicake daily の9月2日付の記事にて私たちの調査のことが紹介されています。 昨年8月の調査では新聞の地方面みたいなところにかなり大判のカラー写真入りでとりあげられたんですけど、今回はウェブです。正直…

帰国しました。

昨夜、台湾より帰国しました。学生たちは一足先に帰国しています。 学生たちとの集中的な調査は約10日間でしたが、共同研究者の陳正哲先生が「濃かったね。1ヶ月分くらいの仕事をした感じがする。」と言ってくれたので研究代表者としてはまずはホッとしたと…

(アブストラクト提出〆切延期のお知らせ)東アジア建築文化国際会議 台南2009

アブストラクト提出の〆切が、8月15日から9月30日に延期されました。主催者側からの情報によると中韓台日ばかりでなく東南アジアなど世界各国からかなりの数が集まりつつあるようですが、〆切を逸してしまった多くの参加希望者からの問合せに応えたいとのこ…

台湾調査報告 その3

かつて竹市が開かれた二層行渓の白砂崙側の土手。ここに竹と人と牛車がひしめく景観を想像してほしい。撮影者(私)が立っている現在のRC造の橋も、昔は竹筏をつなぎあわせた浮き橋だった。 17日に南部での調査を終えて台北に戻る。今日8月19日は国立台湾図…

台湾調査報告 その2

写真は13日に出会った古亭畚と呼ばれる米倉。白河にて。 毎日朝から晩までフル回転のため依然として書く時間がとれず・・・。またしても「とりあえず」なのですが、この写真をアップしておきます。 ↓ 遅ればせながら15日までの調査日誌をアップします。

台湾調査報告 その1

写真は8月11日の左鎮調査。茅さんのトラックにて山間をめぐる我々。 連日たのしく充実した調査が続いている。 なかなか時間がとれず報告が書けないのでとりあえず8月10日までの日誌だけ。 →8月11日分で一区切りになるので追加します。

台北にて都市インフラの一端を覗き込む。

台北市内を歩いていたら、足下に、何だか無数のカラフルな線が花みたいに咲いているのに目がとまり、思わず立ち止まってカメラを構えた。で、「すみません、これ何の線ですか」と聞くと、電話であると。彼は「中華電信」(日本ならNTT)のおじさんだった。「…

吉村順三のソルフェージ・スクール

行ってきます、と書いた翌日に荷造りもせず別の場所へお出かけ。 吉村順三記念ギャラリーというのがあって、そこが吉村順三の事務所だったことも知らず、ただ近くにあるソルフェージ・スクール(1965年竣工)という建物が見学できるということだったので、こ…