吉村順三のソルフェージ・スクール


行ってきます、と書いた翌日に荷造りもせず別の場所へお出かけ。
吉村順三記念ギャラリーというのがあって、そこが吉村順三の事務所だったことも知らず、ただ近くにあるソルフェージ・スクール(1965年竣工)という建物が見学できるということだったので、このまま台湾へ行ってしまい機会を逃すわけにはいかぬと思い目白へ。
この学校をつくったのは吉村夫人。ソルフェージ(ソルフェージュ:仏語)というのは読譜能力のことで、つまり音楽のリテラシーってことかな。僕は音楽は分からないけど、譜面をみて音学をイメージし、初めて見た譜面で先読みをしながら演奏し、逆に音楽を聞いて譜面を描く、というようなことは建築や都市にもむろん通じる。子供に対して、譜と音との関係をつなげる力を方法的に養うってことだとしたら、やっぱり興味あるなあ、ソルフェージュ

建物について。地型(敷地の形状)どおりの平面、道路斜線と雨勾配から決まった(らしき)屋根形状が、ふくらみとシャープさを兼ね備えた見事な音楽室をつくっている。天井はラワン合板(家具から造作までラワンだらけ)。この屋根、コンクリートのスラブの上に石綿スレートの波板を乗せていて、外から見るといわゆる屋根の表現になっている。断熱のためだろうが、おそらく都市への態度をこのいかにも安っぽい帽子みたい屋根で頑張って表現してもいるような気がする。何しろロー・コストの仕事だったらしく削ぎ落とせるとしたらこの屋根くらいだろうと元所員のHさんはおっしゃる。それも帽子は被ったということか。この飄々と割り切ったような無骨さとイヤミの無さは何なのか。ある意味現代的でもあるなあと思った。
see album・・・ディテールもいろいろ面白い。アルバムには旧吉村事務所(現ギャラリー)の写真も混じっているのでご注意。