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ゴシックにおける鉄の使用:建設現場は工匠たちの“研究室”

ゴシック建築に鉄の補強材が、12世紀の計画・建設当初の段階ですでに石造構造体と一体的に用いられたことが、いわゆる放射性炭素年代測定法によって判明しつつあるらしい。 Gothic cathedrals blend iron and stone, CNRS press release, Paris, 17 December…

西洋建築史でこういうレポート出題したらわりと書けていた。

分かる人には分かるので、そんな直球の課題出してるのかと思われそうでちょっと恥ずかしいのだが、12月にゴシックの話が終わったところで出題した。AとBの差異を対照的に論じなさい、っていう、まあ、そのままズバリの課題。達成度の計測じゃなくて、予習的…

ミナレットとミサイルと・・・

スイスでミナレット(アラビア語で塔の意)の建設を禁ずるよう憲法改正を求めるイニシアティブ(発議・請求)が11月29日に国民投票で可決されたというニュースを、数日前にBS2のワールドニュースでみた。驚いた。ちょうど西洋建築史の授業でモスクについて喋…

西洋建築史13/18世紀:啓蒙思想の時代 (最終回)

0114 前回バロックまでの話は終えていたので、まずは都市に目を向けて、中世・ルネサンス・バロックの都市の特徴がどのように展開してきたかを概観して、建築とパラレルに理解可能なことを強調。一方、ロココの都市計画(←語義矛盾というくらい奇妙な響きで…

西洋建築史12/バロックという志向性

ルネサンスの建築家アルベルティは、草むらを歩く人の顔は緑がかって見えるが、それは絵画では再現してはならないと言った。レオナルド・ダ・ビンチは事物の陰影は状況によって様々な色を呈するが、“真実の陰影”とは物体の固有色に黒を混ぜたものであると言…

西洋建築史11/ルネサンスとバロック〜類型的思考による〜

やはりノドの具合が万全でなく、90分講義は危険なので、今日は授業時間内で小課題を出すことにした。 おおむね16世紀と17世紀の実例のなかから、身廊部、ドーム見上げ、ファサードの写真を対になるように与え、その表現上の特質について差異を摘出して対比的…

西洋建築史10/合理の神秘〜ルネサンスの思想と造形

1203 ルネサンスの要点は、まず古代(antiquity)が古典(classic)として発見されたことにある。現在は、典拠としての古代の再生として位置づけられ、両者の「あいだ」の空隙が中世とされる。これは時間のデザイン(歴史)に他ならない。時間というものは、…

西洋建築史09/晩期ゴシックからルネサンスへ

まずゴシックについて補足を2点。 ひとつはコルドバのメスキータ=カテドラルについて。切妻屋根の反復による工場のごときモスクのホールを食い破って、フライングバットレスを持つ聖堂本体が屹立する。大聖堂はリブヴォールトを持ち、後のバロックの要素も…

西洋建築史08/大聖堂の世界〜ゴシックとは何か〜

第7回(前回)、教会堂とモスクの比較をやったが尻切れ気味だったので再度まとめ直し。その上で、「どちらがより“一神教の空間”にふさわしいか」という問いを学生に投げて挙手させてみたところ、モスクの圧勝であった。なぜならモスクは、絶対的超越性として…

西洋建築史07/一神教の空間 〜教会堂とモスク〜

第2回で中沢新一にならって掲げておいたヒトの3つの革命を思い出そう。第3の革命はモーセの革命(3千年前)だった。これは建築に決定的な目標を与えたはず。モーセの前に現れた神は、アニミズム的な精霊でもなく、多神教的な神でもなく、表象を禁じる絶対…

西洋建築史06/アーチ系技術の展開〜ローマからビザンチンまで

古代ローマの建築生産上の大きな特徴はコンクリートを大々的に用いたこと。ポゾラナ pozzolana と呼ばれる土(火山岩が砕けてできたもの)に、石灰と水を混ぜ、骨材として石や煉瓦の砕いたものを加えて突き混ぜれば水中でも凝固する。で、この話をすると服部…

西洋建築史05/市民生活の空間〜ギリシアとローマ〜

メソポタミア以降の古代オリエント世界とその蓄積の上にある古代ギリシアの何が違うか。前回は構法と表現の問題を軸にしたが、その観点からみると、壁で囲われた内部の列柱ホールという構成(ペルセポリスの百柱の間みたいなもので、のちに古典期モスクにも…

西洋建築史04/組積系と軸組系〜オリエントからギリシアへ

1015 メソポタミア、ペルシア、エジプトなどの古代文明にみられる建築物をみてゆくと、石という同じ材料がいくつかの構法とその複合という高度な水準にまで高められていくのが分かる。構法、正確には構法の術 art of construction とでも言うべきかもしれな…

西洋建築史03/都市の誕生〜メソポタミア〜

前回の主題は、新石器革命による「建築の誕生」だった(ただしそれは、洞窟から出たヒトが、地上に資材を積み上げたり結び合わせたりして建物を構築しはじめたことを意味するのであって、「建築 Architecture」概念の誕生はまた先の話題)。メソポタミアのギ…

西洋建築史02/先史時代の建築〜非対称世界への旅立ち

ヒトの革命にはいろいろあるが、 (1)「心の革命」(5-6万年前。脳の革新) (2)「新石器革命」(約1万年前。農耕のはじまり) (3)「モーセの革命」(約3千年前。一神教の発明) の三つを置くと、建築の歴史も理解しやすいように思う。長い長い旧石器時代の末…

西洋建築史01/イントロダクション

後期の授業がはじまっちゃいました。 0924 今日は「様式」、「建築史/住居史/都市史」、「ハイ/ロー・アーキテクチャ」、「西洋/東洋」といった言葉についてあまり意味のない固定観念に縛られるのはやめようという話と、「先史/古代/中世/近代」とい…