西洋建築史13/18世紀:啓蒙思想の時代 (最終回)

0114 前回バロックまでの話は終えていたので、まずは都市に目を向けて、中世・ルネサンスバロックの都市の特徴がどのように展開してきたかを概観して、建築とパラレルに理解可能なことを強調。一方、ロココの都市計画(←語義矛盾というくらい奇妙な響きです)とかがあるわけではなく、都市計画・都市デザインという領域ではバロックが17世紀から20世紀前半まで長く命脈を保つことを確認しておく。

 さて18世紀。舞台の中心はフランス。以下のような目まぐるしい展開のなかで、ルネサンス以降の基本的な思考様式が揺らぎ(あるいはルネサンスに胚胎していた根本的な矛盾が露呈し)、論理の再構築に向けた大きなエネルギーが渦巻きはじめる。
(1)新旧論争。古典古代の規範性を揺るがす。同時に建築の恣意性、趣味、判断の側面を浮上させる。
(2)ギリシア発見(歴史的遡行)。考古学的な追求。これも新たな規範をつくり出すと同時に、古代の多様性を明るみに出す。
(3)建築論的ラディカリズム(原理的遡行)。ロージェの原始の小屋。そしてスフロのサント・ジュヌヴィエーヴ。補強のため随所に鉄筋を入れ込み、中世のフライングバットレスをそれとは分からないように採用している。そうまでして、独立円柱のみによる大規模教会堂の実現にトライした興味深い建物。
(4)ヴィジョネール達の出現。もちろん純粋幾何学立体による建築。しかし、授業では時間がなく紹介できなかったけれど、論じるべき問題が多数ある。科学と美学との結合を見事に表現してしまったニュートン記念堂のブーレー。キャラクター概念を暴走させてしまったルドゥーやルクー。そして深い闇のようなピラネージ。
(5)工学的プラグマティズム。18世紀の最末年から19世紀へとつながるデュランの試み。
これらが、のちに近代建築の起源としての位置を与えられることになるわけで、革命の時代18世紀は興味が尽きない。ところがそれが一直線に20世紀的なものに行かないところがまた面白い。19世紀は少なくとも見かけ上は非革命的だ。いま再検討すべきは18世紀か、それとも19世紀か。