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神戸芸工大時代を思い出す・・・『初めての建築設計:ステップ・バイ・ステップ』

川北健雄・花田佳明ほか編著『初めての建築設計:ステップ・バイ・ステップ』(建築文化シナジー、彰国社、2010)をお送りいただいた。 強度の健忘症だから怪しいが、たぶん神戸芸工大に助手として赴任した年だと思うので1995年かな、2年生の最初の建築設計…

ベイトソンの分肢則:サイバネティクスとトポロジー

よく読まれている『精神と自然』(1979)に比べて、著作集『精神の生態学』(1972/新思索社1986/改訂版2000)所収の文章は学術的なものから論争的なものまで、ベイトソン流のドライな思考は徹底されているものの決して平易とはいえず、数年前にかなり難儀…

中村正義の美術館と美術批評誌『LR』

土曜は東大都市工の若い研究者の方がお二人研究室を訪ねて来て、かなり話し込んだ後、さらに生田駅前でビールやらワインやら飲みながらうちの院生たちと盛り上がった。議論の中心はむろん都市と都市計画の現在。 今日(日曜)は午前中に〆切守れなかった原稿…

ナイーブ・ヒストリーなんてことを考える。

建築雑誌2010年3月号「特集ナイーブ・アーキテクチャー」を読む。正直きわどいテーマだが、1943年生まれの真壁智治さんが今日の状況をその可能性において真摯に見極めようとする姿勢が、本号にある種の立体的な成立理由を与えている。加えて、巻頭の対談によ…

プレゼンチスト村野藤吾/郡司ペギオ幸夫の時間論/建築雑誌2010年2月号

私は厳然なるプレゼンチストである。(村野藤吾「様式の上にあれ」『村野藤吾著作選・様式の上にあれ』鹿島出版会 p.15) 実は presentist を主な英英辞典で引いてもヒットしないから、これは村野の造語と考えられることをまず確認しよう(現在主義者の意)…

まるでゼミのような。

田町にてすまいろん編集委員会に出席。2010年夏号を責任編集させていただくのでその企画の審議でしたが、まあ本当に貴重な場所です。厳しい眼で的確なコメントが飛び交い、まるでゼミのようでありました。中身はきちんとしたタイミングで明らかにしたいと思…

新装 すまいろん / 日本の集落の三〇年 / 東京あんこガラパゴス

住宅総合研究財団の『すまいろん』のデザインが新しくなりました。先史集落遺構をグラフィカルに処理した新シリーズです。(それでじーっと見てたら、雑誌の英語タイトルが Smile On "Housing Forum" Quarterly であったことを初めて知りました。すまいるお…

建築雑誌2010年1月号・感想

楽しみにしていた中谷委員会の建築雑誌新年号が本日届いのたので、特集「検証・三菱一號館再現」を一気読み。担当=内田祥士・後藤治。めちゃ硬派です。特集中では松山巖・古谷誠章・土居義岳の鼎談がとくに読みごたえがありました。 ここでは取り急ぎ、エデ…

地誌はあるが「時誌」という言葉はないらしい。

鈴木博之+東京大学建築学科編『近代建築論講義』(東京大学出版会、2009)を読んだ。鈴木自身の短い論考がどれも冴えていると思った(他の論考より明らかに射程が広い)。以下は本書への直接の感想ではないので恐縮なのだが、ああ面白いなと思ったのは、鈴…

住宅総合研究財団『すまいろん』の編集に関わらせていただくことになりました。

本日(2009.10.20 Tue.)よりすまいろん編集委員会に出席。錚々たる方々(ホントにキレる面白い方々)とご一緒させていただきます。まずは2010年夏号の特集を担当せよということでさっそく素案をいくつか提示させていただきました(古建築実習中、奈良の居酒…

「室内」という問題

古建築実習中に2冊読了(夜はひたすら飲んでたけど、昼間は移動時間がある)。 ひとつは海野弘『アール・ヌーボーの世界:モダン・アートの源泉』(中公文庫、1987/原著=造形社、1968)。著者29才、1968年の処女作。茫漠とした海のようなアールヌーボーの…

建築雑誌2009年10月号・特集「東京新地形論」

が、昨日届きました。昭和女子大学杉浦研究室・日本大学山中研究室・国士舘大学南研究室によるフィールドワークを真中に置いて、石川初、宮本佳明、中島直人、藤森照信、それに私の文章が挟み込むかたちの編集になっています。全体に目を通してみて、都市フ…

自分が答えを知らない問題から出発せよ。そして直接関係ない本を読め。

《寄宿先の家の前に雑草と土に覆われた三角形の空き地があった。午後になると、八才から十二才ぐらいの路地裏(カンポン)に住む男の子の一団が、よくそこにサッカーをしに来た。まずコインを投げて裏表を当てる。そして、負けた方はおもむろに半ズボンを脱…

パシコムおじさんとカンポンの世界

「私の家はネ・・・ホテル・インドネシアの隣なんですよ。RUMAH SAYA 'MAH ... DIBELAKANG HOTEL INDONESIA ...」 インドネシアで40年連載されたG.M.スダルタ作の人気漫画「パシコムおじさん」より(この漫画は1979年9月19日付)。 ホテル・インドネシアは日…

個人誌『建築と日常』創刊

長島明夫さんが雑誌を出されました。おめでとうございます。春先にお話をうかがって、長島さんのような人は力を発揮しないとだめです、ということと、「日常」という問題意識は絶対いいです、ということだけは申し上げた記憶があります。「日常」はなぜかく…

『彰化一九〇六』(アセテート)中文版につき、出版社と打合せ

20090805 Wed. 台北縣新店市にある大家出版を訪ねる。大家出版は、遠足文化事業有限公司傘下の小さな出版組織体のひとつ。編集室は引越をしたばかりでまだ看板も出ていないが、入ってびっくりそれなりに大きなフロアにいくつかの出版組織体がそれぞれの場所…

トウキョウ建築コレクションの本できる。

トウキョウ建築コレクション2009をまとめた一冊。ざっとページをめくってみたたが、新企画もあり、また応募大学の幅が拡がり、ぐっと定着してきた感がありますね。今後も是非がんばってください。さて、今回の“2009”には昨年明治に来てほぼ出会ったその場で…

南洋堂N+スクール/『彰化』台湾版/建築系ラジオなどなど

まず何と言っても南洋堂の店主AさんとSさん(神戸芸工大出身)、司会をしていただいた松田達さん、コメントをくださった田路貴浩・南泰裕のお二方、嬉しい感想をくださった鹿島出版会のKさん、それからぽむ企画のHさん・Tさん(お久しぶり)・・・皆さん有り…

感銘を受けた一冊。戦略的概念としてのバラックをめぐって。

田中傑『帝都復興と生活空間〜関東大震災後の市街地形成の論理〜』(東京大学出版会、2006) 焦土と化した東京にいかにして生活空間が立ち現れ、市街地として整序されてゆくのか。この疑問に、入手可能なあらゆる史資料を駆使し、都市工学的・社会工学的基礎…

すまいろん2009夏号・特集「継承の知恵:保存・再生・無意識」

前に早稲田大学にて1年生の皆さんの授業を兼ねて行われた対論(大嶋信道×中谷礼仁、梶山秀一郎×青井哲人)ならびにこれと別に行われた対論(前野堯×清水重敦)が掲載された『すまいろん』夏号ができあがりました。 いま全部に目を通してみて思いました。是…

都市・集住体・不法占拠

先日、広島の基町長寿園高層アパートを訪ねた。大高正人の設計になる鉄骨とプレキャストパーツの集合体は思った以上に時代の空気をぎゅっと封じ込めた濃密な建物で印象深かった。これを紹介した『新建築』1973年5月号には石井和紘が「ルポルタージュ 基町旋…

震災の痕跡を。

笠原一人+寺田匡宏 編著『記憶表現論』(昭和堂、2009)をお送りいただく(長いことお会いしていない旧友の笠原さんから。謝謝!)。神戸での疎外的被災(とでもいうべき)体験以後、過去の事件の「記憶」とその「表現」をめぐって、研究フォーラム、展示会…

獄舎的なるもの

少し前に、伊東豊雄の「座・高円寺」をみた。すでに学生たちはブログに感想を書いているが、僕は何といってもむかし書いた伊東豊雄論(『建築思潮』05, 199703)のことを思い出して妙に感慨深かった。せんだいメディアテークのコンペが終わった頃、1996年夏…

アヒルのその後。

R・ヴェンチューリ+D・スコット・ブラウン+S・アイゼナワー著/石井和紘+伊藤公文訳『ラスベガス』鹿島出版会、1978年(原著:Robert Venturi + Denise Scott Brown + Steven Izenour, "Learning from Las Vegas", MIT Press, 1972年刊)の最重要キーワ…

都市生成・持続の実験場〜築地市場について〜

こういう記事を書きました。 青井哲人「都市生成・持続の実験場「築地市場」」(日刊建設通信新聞2009年5月28日付)昨年度、研究室の宮戸明香という院生がまとめた修士論文は、魅力的なドキュメントに満ちた、しかし非常にきっちりと築地仲卸売場の原理を読…

建築家 坂倉準三展 はじまる:神奈川県立近代美術館[鎌倉]:2009年5月30日〜9月6日

29日(金)の内覧会+レセプションは盛大であったとのこと。実は(本当に残念でならないのだが)僕は職場の事情でやむなく欠席。高階秀爾・槇文彦・菊竹清訓・二川幸夫といった錚々たる人たちがいたと、代理出席のM君が興奮気味のメールをくれた。 で、今日5…

角南神学・検証の手がかりとなる2冊

5月11日のエントリーでふれた2冊を読了したので感想のようなものを書きたい。いずれも1980年に95才で逝去する前に書かれた角南の遺稿を、生前の弟子である西本輝六氏の監修により2巻に編み直したもの。 ・角南隆『万物は生きている』(パレード、2006) ・角…

photographers' gallery press no.8 田本研造:北海道開拓の写真群

写真史の倉石信乃先生が、僕の神社の本を引用したので、という手紙付きでお送り下さった。倉石先生は僕のつとめている大学の理工学研究科・新領域創造専攻・ディジタルコンテンツ系で教えておられる。 photographers' gallery press no.8←内容はこちら。 pho…

尋常ならざる本が2冊届く。

休講・連休などで3週間ぶりに前任地の人間環境大学へ。非常勤講師控室のメールボックスに発見したある包みを開けてみたところ、何と「角南隆」著の本が2冊入っているではないか。 角南隆(1887-1980)という人は、昭和初期から日本の神社造営の頂点に君臨し…

建物が単なる〈充填物〉であるとは! --- Colin Rowe, "Collage City" 1978

建物が単なる〈充填物〉であるとは! これは嘆かわしいほど受け身で、あまりに経験主義的な考えのように受け止めることもできる ---- しかし必ずしもそうである必要はない。(C・ロウ+F・コッター『コラージュ・シティ』1978/鹿島出版会、1992 p.128) …