中村正義の美術館と美術批評誌『LR』

R0010643土曜は東大都市工の若い研究者の方がお二人研究室を訪ねて来て、かなり話し込んだ後、さらに生田駅前でビールやらワインやら飲みながらうちの院生たちと盛り上がった。議論の中心はむろん都市と都市計画の現在。
今日(日曜)は午前中に〆切守れなかった原稿を一気に書きあげ、午後は中村正義の美術館篠原一男設計/直方体の森/1971)を訪ねた。受付の女性(名乗られなかったが、おそらく正義の長女であり館長でいらっしゃるのだと思う)の、この美術館への誇りに満ちた愛をひしひしと感じながら(建築学生は行儀よくせよ、ここは美術館である)、キュービックなヴォリューム群と谷間のようなヴォイドがつくるシンメトリー、それらをつなげる単純ながら動的に関係しあう開口部のありように唸る。近年の建築につながってくるものがたしかに感じられる。むろん正義の作品もすばらしく、岩絵具の力強い筆致が重なり合い、強く、重く、それでいて透明感のある絵ばかりだった。野外で地べたに腰を下ろし、這うように、また風景を睨むように凝視して描く正義の写真も印象的だ。帰りがけに図録と、それから『LR Returns』というタイトルの美術批評誌が気になり、バックナンバーのなかから第14号(2008)を購入。表紙に「1975年、中村正義さんは日展と闘う「東京展」を立ち上げた。その時の肉声を33年ぶりに再現してみた。」と大きく印字されていた(東京展HP)。わずか64ページの冊子だが、70年代と今日をつなぐ継続的な思考が基底にあると思われた。建築にそれが欠けているのはまずいと思う。このところちょっと考えるところもあって大いに参考になった。