神戸芸工大時代を思い出す・・・『初めての建築設計:ステップ・バイ・ステップ』

川北健雄・花田佳明ほか編著『初めての建築設計:ステップ・バイ・ステップ』(建築文化シナジー彰国社、2010)をお送りいただいた。
強度の健忘症だから怪しいが、たぶん神戸芸工大に助手として赴任した年だと思うので1995年かな、2年生の最初の建築設計の授業(環境デザイン実習と呼んでいた)について協議するなかで、Vito Bertin 先生がたいへん熱心にこの方法を提唱されたように記憶している。一緒に開発したのは齊木崇人先生、川北健雄先生、木村博昭先生と僕だったと思う。2年ほど前だったか芸工大から連絡をいただいて、今もその方式での授業を継続しているときいて驚いた。今年でもう16年目くらいになるということか。きっと進化しているんだろうな。この本はその授業方法をそのまま分かりやすく再現している。設計は統合的な作業だからひとつの線を引くときも背後に多数の元(構造とか材料とか敷地条件とか法規とか・・・)を同時に重ね合わせて想定しているもので、結局ボキャブラリー等と呼ばれるものは長い歴史のなかで諸元の複合が忘れられるほど物神化したものだと思うし、さらにそれを解体しながら再統合するなんていう高次の作業をするわけだけれど、初学者にはそんなもの何一つないわけだから、いま自分は何をやっているのか分からないという不安におののくことになる。ならばひとつひとつ元を重ねていき、階段を一段ずつ上がりながら遡及的に統合する作業を繰り返すような方法をとれば、今なすべき作業とその意味はある程度明確化・自覚化できる。藤村龍至さんの言ってることもそれほど遠くないと思うけどどうかな。ともかく手にとってご覧あれ。ウチの2年生にも見せてみようっと。