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未来派の料理ってどんなんだ?

僕は授業の準備のためによくネット検索をする。情報の判断と使い方はそれなりにきちんとしないといけないけど。たとえば近代建築史、西洋建築史で、その辺の教科書や図集に掲載されようはずもない詳細な情報が知りたい時は、Wikipediaでも英語版を繰ってみる…

近代建築史/期末試験

0724 試験やりました。 何しろ明大生に対する初めてのテストだからね、採点の苦労はあえて我慢し、理解度を問う問題にしたぜよ。しかしおまえら、けっこう面白がって聞いててくれたと思ったのに、そりゃないぜって感じの理解度だぜよ。 ところで、授業でいつ…

近代建築史15(最終回)/モダニズムを超えて

まずはモダニズムの最低限の規定をしなくちゃ。Clement Greenberg の「自己批判を通じた自己純化」は古典的。「絵画とは何か?」を突き詰めれば平面であるということ以外には残らないように、「建築とは何か?」を問えば人間活動を内包する空間だということ…

近代建築史14/日本のモダニズム

0710 前回は1920年代日本=表現主義系の全盛期だったが、今日は1930年代を中心に。Antonin Raymond の位置(めちゃ早い)、デ・スティルの重要性、バウハウスへの接触ときわめて裾野の広い追随者群の形成、そしてLe Corbusier の弟子たちの出現・・・という…

近代建築史13/「我々」の世界史的前提〜日本の初期建築運動

0703 ヨーロッパ、アメリカ、日本のモダン・ムーブメントが同じ時間断面で見渡せるように、相関年表のごときものを作成して配布した。それなりによく分かるものができた。たとえばコンドル先生が来日した1876年というと、英国にArts and Craftsはあるが、次…

近代建築史12/国家と建築

0626 幕末明治は潜在的な歴史のパス(経路)が幾筋も見えるような不確定な時代であり、まただからこそひとつひとつの選択がそのパスを確実に狭めて継起的に決めてゆく時代でもあった。たとえば明治国家の首都は大阪になったかもしれないし、江戸・京都の二京…

近代建築史11/コロニアルと擬洋風

0619 さあいよいよ日本です。 まず前提としての地球全体の見取り図。それから徐々に眼を下ろしてゆくと・・・ここは19世紀中頃の台湾北部は大渓という街。淡水河を舟で遡れる限界の地だ。ここに産する材木・樟脳・茶などは舟に積まれて川を下り、台北を通り…

近代建築史10/摩天楼と草原の家

0612 分厚い過去が堆積するヨーロッパとは異なり、新世界アメリカは独自の近代建築の方向性を提示する。巨大都市の摩天楼群と、草原・砂漠あるいは郊外の住宅群。この二つはもちろん対をなす。 前者はD. Burnham や L. Sullivan らのシカゴ派が先鞭をつける…

近代建築史09/近代建築の定式化(再)

先週は時間切れでバタバタしてしまったので仕切り直し。コルビュジエの特質について少々丁寧に話す。 L'Esprit Nouveau 誌(コルビュジエが1920年から25年まで計28冊を編集・発行した雑誌)を一度見てみたいと思った。*授業後、ある学生が質問にきた。Le Co…

近代建築史08/近代建築の定式化(モダン・ムーブメント3)

0529 後ろを顧みない前衛運動から、広く社会一般に定着しうる近代建築の定式化へ向かう1920〜30年代を扱う。ところが授業時間の読みが大誤算、しかも情報過多でシナリオが曖昧だった。失敗だあ、今日は。ともあれ、次のような話。 (1) ドイツ・オーストリア…

近代建築史07/世紀初頭のアヴァンギャルドたち(モダン・ムーブメント2)

0522 世紀末の退廃的気分から一転、新世紀は攻撃的にフロンティアを押し広げようとする運動とともに幕を開ける。1.機械と速度への陶酔:未来派・・・まずはレイナー・バンハム『第一機械時代の理論とデザイン』からマリネッティ起草の「未来派宣言」を抜粋…

近代建築史06/世紀末の芸術運動〜繁茂する装飾〜(モダン・ムーブメント1)

0515 John Ruskinを根拠とし、William Morrisらが展開してゆくArts and Craftsのポイントは以下のとおり。 (a) 産業革命の進む19世紀社会を批判し、人と人、人とモノの共同体が成立していた中世を理想化。 (b) フォーカスを「装飾」にあてる。 (c) 生活総体…

近代建築史05/モダン・ムーブメントの背景

0508 前回の3つのエピソードが、19世紀に生じたどんな歴史的転換を物語るものであるかを検討。それが同時に次週以降に話すことになるモダン・ムーブメントの幾筋かの流れの後景となるはず。エピソード1→ 「建築」の外部に立ち現れたエンジニアリング的世界…

近代建築史04/産業革命は建築に何をもたらしたか。

0501 様式のスパイラル状の地位低下は、建築を本体/表層に分離し、様式を後者に閉じ込めていくプロセスだった。では、本体と表層の関係はそれ以後どのように推移していくのか。建築と建築論はどのように組み替えられていくのか。 というわけで、今日はこれ…

近代建築史03/リヴァイヴァリズムとネーション

0424 今回は「様式の最盛」こそが「様式の凋落」であった19世紀の逆説をみる。前回はクラシシズム系に絞って14c〜19cの様式展開が大きく円を描いてさらなる源泉へと遡った(新古典主義)ところまでを描いたが、それにもう一方のゴシック・リヴァイヴァイル系…

近代建築史02/古典主義系建築と歴史の発明

0417 (1) ヨーロッパの歴史はAncient Times→Medieval Timesと進んだところで、Renaissanceという折り返しがあり(古を典とみなす=Classicism)、以降がModern Timesと考えられていることについて。 (2) 14c→18c半の間にClassicを軸とした造形の可能性が消費…

近代建築史01/イントロダクション

0410 まずはこの講義を進めるにあたって常に念頭に置いてほしいこと。(1) 建築はシステムである。 ・建築物は様々な要素、様々な側面が緊密に織り合わされたシステムである。 ・建築物は外的な諸要素が緊密に連関した社会的なシステムのなかでしか成立しない…