近代建築史09/近代建築の定式化(再)

先週は時間切れでバタバタしてしまったので仕切り直し。コルビュジエの特質について少々丁寧に話す。
L'Esprit Nouveau 誌(コルビュジエ1920年から25年まで計28冊を編集・発行した雑誌)を一度見てみたいと思った。

*授業後、ある学生が質問にきた。Le Corbusier は20世紀最大の建築家だというけれど、もしあの饒舌なほどの言論活動がなければそう言われるようにはならなかったのでしょうか、それから彼の代表作のサヴォア邸は長くは住まわれなかったらしいけれどそれでも最大の建築家と言えるのでしょうか、だんだん分からなくなってきました、と。うん、当然にして重要な疑問だ。そんな君は『ル・コルビュジエのペサック集合住宅』(鹿島出版会、1976/Philippe Boudon, "The Lived-in Architecture: Le Corbusier's Pessac revisited",1972)を読みたまえ。Lived-in Architecture 、すごいね。日本でこんな作業行われてきたか?

*余談だが、ABC(国際構成主義)というグループがあって、思想的・運動論的にはロシア人 El Lissitzky、建築設計の腕前ではオランダ人 Mart Stamが引っ張るかたちで、スイスの若いモダニストたちが集まっていた。Stamはゴリゴリの共産主義者であり機能主義者であり構成主義者だった。彼が設計した例のVan Nelle工場ではベルトコンベアの入ったチューブが空中を縦横に飛んでいてすげーカッコよいが、あれは分解された機能単位に律儀にヴォリュームを与え、プログラムに従って構成しなおすという作業の結果だろう。徹底的な機能主義が構成主義と結びつく所以だ。CIAMの中核にも当初は彼らABCがいた事実があるのだが、しかし、ほとんど知られていないね、この人たちは。シーマ・イングバーマン著・宮島照久+大島哲蔵訳『ABC:国際構成主義の建築 1922-1939』(大龍堂書店、2000)はよい本。