近代建築史05/モダン・ムーブメントの背景

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前回の3つのエピソードが、19世紀に生じたどんな歴史的転換を物語るものであるかを検討。それが同時に次週以降に話すことになるモダン・ムーブメントの幾筋かの流れの後景となるはず。

エピソード1→  「建築」の外部に立ち現れたエンジニアリング的世界。それが背後に生じた巨大な建築生産システムの転換につながっていたことも想像すべし*1。EiffelやPaxtonのような「技術屋」が外部的存在だったことは、「芸術家・建築家」の激烈な反応をみれば分かる。しかし、間もなく建築家はこの外部性を「建築」に内部化していくだろう。

*1 鉄鉱石を採掘するときに出る地下水も蒸気機関のポンプで汲み上げるのでなければ鉄の大量生産は不可能であり、また現場ではリベット打ちのチーム編成が工夫されなければならなかった(というようなことの総体)。

エピソード2→  都市モデル・住宅モデルを提示できる能力が、20世紀の建築家にとってはそのプレゼンスの根拠となった。その際、土地・農業を基盤とする貴族・教会の社会支配が崩壊し、流動的都市民としての(1)中産階級と(2)労働者階級(庶民階層)が社会の主役となったことは重要。(1)→郊外独立住宅、(2)→都市集合住宅が建築家のターゲット(=マーケット)となる。

エピソード3→  パノプティコンは監視者(他者)の眼を囚人が内面化するよう促すため発明された施設プロトタイプ。19世紀は社会構成の変化に伴って多数の新しいビルディングタイプ(上記の住宅2類型も含む)が要請され、旧来のお決まりの平面構成では対応が難しくなる。かくして、プログラムに応じて平面構成を組織するという思考様式が確立してゆく。