近代建築史07/世紀初頭のアヴァンギャルドたち(モダン・ムーブメント2)

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世紀末の退廃的気分から一転、新世紀は攻撃的にフロンティアを押し広げようとする運動とともに幕を開ける。

1.機械と速度への陶酔:未来派・・・まずはレイナー・バンハム『第一機械時代の理論とデザイン』からマリネッティ起草の「未来派宣言」を抜粋紹介。冒頭の部分は、バンハムによれば歴史的都市へと侵入してくる機械文明、そのコントラストの詩的表現だ。マリネッティの故郷、北イタリアの「遅れた」風景であればこそ、すでに先進地で発達した高度な機械がいきなり押し寄せる。それへの感受性(*)がこの「宣言」の出発点。つづいて陶酔的な自動車賛美。蛇のようにマフラーが巻きついた車は、人間(しかも個人)を包んで速度の快楽に誘う・・・。というわけでサンテリーアの絵の次は、FIATのリンゴット工場をみる。

* G・ベイトソンは「美」とはモノゴトの結ばれ方のパターンへの感受性のことだと言っている。その意味で、未来派の美はマリネッティの居たコンテクストと切り離せないだろう。

2.個我の発見:表現主義・・・expression(表現)はimpression(印象)の対立概念(pressの向きの問題)。モネのごとき外界の分析的再現ではなく内面の表出が目指される。といっても建築ではやや分かりにくい(もともと非再現芸術だから)。むしろ外的規範への依存の拒否と考えれば理解しやすいか。なお、シュタイナーのゲーテアヌムのような強い彫塑性が鉄筋コンクリートのキャスティングという技術的性格に負うところが大きいことには注目しておこう。

3.造形の自律:構成主義・・・思い切って単純化すると、セザンヌからピカソ、ブラックへという一連の探求から、対象の再現という契機をとりのぞけば抽象芸術の誕生である。点・線・面そして色彩といった抽象的要素の構成という方法の登場。外界も内面もいずれも表現の「対象」だとすれば、構成主義は対象を必要としない芸術だといえよう。デ・ステイル、ロシア構成主義がこの方向性の代表。

アヴァンギャルドとは軍隊の最前列を意味する。つまり敵と交戦する前線であり、敵を倒せば前線は前へ前へと移動する。ところがアヴァンギャルドは(アヴァンギャルドであるかぎり)自分たちの後ろを振り向かない。より普遍的な近代建築の定式化は次週の話題。