近代建築史06/世紀末の芸術運動〜繁茂する装飾〜(モダン・ムーブメント1)

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John Ruskinを根拠とし、William Morrisらが展開してゆくArts and Craftsのポイントは以下のとおり。
(a) 産業革命の進む19世紀社会を批判し、人と人、人とモノの共同体が成立していた中世を理想化。
(b) フォーカスを「装飾」にあてる。
(c) 生活総体のデザインを探求。
(d) 多様な分野の芸術家が制作組織・教育組織等をつくって運動。

世紀末からの芸術運動をたどると、(c)(d)の側面は広く共有され継承されるが、(a)=中世主義は間もなく力を失い、(b)=装飾は狂奔したのちに消える(まったく消えてしまうわけではないが)。後者は Art Nouveau や Cezession のこと。V. Horta の Hotel Tassel (1894)についての鈴木博之の描写はすばらしい。授業でもそのまま引用して読み上げさせていただく(『建築の世紀末』)。未だ自らのデザインを持たぬ都市中産階級の流動的で刹那的な気分とシンクロし、またたく間にエスカレートし、そして消費されてしまった短命な Art Nouveau に思いを馳せる。

さて、Arts and Crafts に発する系譜で持続性があったのは、中世主義を相対化し、工業化をむしろ基盤に据えていく大陸部の一連の「工作連盟」の流れで、その先にバウハウスがあることも見据えておこう。