10+1 web site 201311 書評特集に寄稿しました。

201311_tenplusone_bookreview10+1 website 2013年11月号 特集 ブックレビュー2013 が少し前から公開されていますが、僕も編集部からの依頼に応えてひとつ書かせていただきました。
青井哲人「群像の貴重な証言集めた労作。私たちはその声をどう聞くか──豊川斎赫『丹下健三とKENZO TANGE』」
同じ豊川氏の著書『群像としての丹下研究室』(オーム社、2012)の資料編あるいは姉妹編とでもいうべき大作(890ページ)です。著者の「群像」という視座(枠組)なしにはこのような貴重な証言集は生まれなかったでしょう。実際、丹下研究室およびその外部に拡がる強力な「群像」こそが丹下的な構想力・創造力の基盤であったことを解き明かした作業は大変重要なもので、丹下生誕100年に何か従来とは異なる新しい視点があるとすれば豊川氏のこの作業によるところが大きいことは誰しも認めるところだと思います。そして、未来の読者のパースペクティブや疑問がここから様々なヒントや文脈を紡ぎ出すであろう豊穣なアーカイブとして、この本は大きな潜在力を持つことでしょう。手もとに置くには高価ですが、49人の証言集はどこを読んでも面白いこと請け合いますし、丁寧な註と魅力的な画像も、読者を助けてくれます。その上で、しかし豊川氏のスタンスには疑問の点もあり、あえて批判的なコメントもさせていただきました。
※なお、掲載が他の書評より遅れたのは、ちょっとした手違いで当方への執筆依頼が遅れたという事情ゆえです。念のため書き添えさせていただきます。