台湾、歴史的な災害。

日本でも連日報道されていると思うが、台湾中南部が台風および続く西南季節風による大豪雨にみまわれている。3日間ほどで2000〜2700mm、平均年間降雨量を超える見込み。いまだ全貌は明らかでないが、多くの人命も失われている。歴史的な災害になると言われている。
と同時に、まったく注目されはしないが、多くの建物が失われていることも間違いない。日干煉瓦造の家屋が溶け出して泥に戻ってゆく姿がTVの映像にときおり映り込んでいる。土に与えられた秩序が再び本来のフラットな乱雑さを取り戻してゆく姿はある意味で見事なのだが(エントロピー増大の法則の凄まじい正しさを目の当たりにしている気がする)、それを再び日干煉瓦にする再生産がかつては繰り返されて来たに違いない、という想像を映像を見ながら働かせてみる。すると現代(ここ数十年)の災害は、たんなる反復・循環ではなく、ひとつひとつが取り返しのつかない歴史的・切断的な出来事としての意味を持ち合わせていることを強く感じる。もちろん、循環的な再生という側面がまったく失われてしまったわけではないのだが。
つまり日干煉瓦造・竹造の家屋はもう建てられることはない。私たちがこのところ調査してきた家々もかなりの数が濁流に飲まれた、あるいは災後に取り壊されるのではないか。今後、できるだけ再訪したい。

昨日まで私たちがいた台北など北部地域は幸い無事。台風の影響で台湾入りが遅れた学生たちも昨日合流して、夕方には澎湖島に入った。ここも台風の被害はない。今朝はかなり晴れ間も見える。予定より期間が短くなってしまったが、今日から調査開始・・・けれど、昨年調査した村々のことが時折気になる。