アメ横三十五年

アメ横三十五年の激史_1982どうです、激しいでしょう。何てったって「激史」ですからね。しかし表紙から想像される告発!糾弾!みたいなものではなくて、戦後日本人の克明な生活誌であり、“特殊商店街”の熱気と機構を記録した商業誌であり、戦争と植民地主義の遺産を横断するかのごとき社会誌であり、“パン助”から男娼まで悲喜交々の風俗誌であり・・・、それらを含む都市史のドキュメントとしてすこぶる読み応えがある。著者は台東区の引揚者会の中心人物のひとりで、彼らがアメ横をつくり出した。本書はそうした著者自身の回顧的な記述と、関係者へのインタビューと、新聞記事や書物の抜粋などなどの編纂というよりアマルガムといった体のもので、学術的には扱いに注意を要する面もありそうだが、まだ糊も乾かない生々しいスクラップブックといった雰囲気の書物である。
このところ戦後復興期の都市をできるだけ実感できる書物を漁っては読んでいる。不謹慎かもしれぬが読むとたいてい元気になる。胸躍ったり笑い転げたりする。我々の都市は、たとえ大きなフタを被せてはいても、確実にそこにつながっていると思うと元気が出るのだ。フタはそのうちにとれてしまうかもしれないしね。
(書誌情報)塩満一『アメ横三十五年の激史』(東京稿書房、1982) 古書入手できます。
リートフェルトの次にアメ横。落差が大きくてすんません。