リートフェルトとカリブの海

Rietvelt_Oku_Kaya奥佳弥著,キム・ズワルツ写真『リートフェルトの建築』(TOTO出版、2009)。著者の奥佳弥さんは神戸芸術工科大学時代の同僚で友人だが、もうずいぶんお会いしていない。ご本送って下さりありがとうございます。

Rietvelt_Verriet_Institute_1952_1で、さっそく開封してパラパラと頁をめくっていて目に止まった写真がコレ(転載ご容赦を)。オランダ領アンティル諸島のキュラソーという島(Curacao, Netherland Antilles)、首都のウィレムシュタット(Willemstad)郊外にたつ障害児のための家。竣工は1952年。実は僕、2000年と2001年の2回、カリブ海域をふらふら廻るチャンスをいただいたことがあり、メキシコ、キューバ、ドミニカ、トリニダード・トバゴ、セント・マーティン、スリナム等々に行ってその多彩さに圧倒されたのだが、その際2度ともウィレムシュタットを訪ねているにもかかわらずリートフェルトの足跡なんて全然知らなかった。そもそもデ・スティル時代以降のリートフェルトについて僕らの知識はほとんどないように思うのだが、それにしても一変するなあ見方が。本書で明らかになる作品全貌のなかでも最も先入観を裏切ってくれる建物のひとつ。
天井に使われている藁マットは、直後のソンスベーク彫刻パヴィリオン(Sonsbeek Pavillion for Sculpture, Arnhem, 1955)でも一部に採用されている。そんな眼であらためて頁を繰ると、抽象的形式性とともに、比較的簡素な素材の繊細な扱いがリートフェルトには一貫しているようにも思えて来る。

ちなみにキュラソーでは伝統的な妻入街屋と近代建築(ロッテルダム系?)の両面においてオランダ色が濃厚。(2001年撮影)
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