橋本健二+初田香成編著『盛り場はヤミ市から生まれた』(青弓社)出ております。

511hfrp9wHL._SS500_2010年からだったでしょうか、社会学橋本健二先生、都市史の初田香成さん、吉祥寺の研究(だけじゃない)を頑張ってきた井上健一郎さんらの集まりに誘ってもらい、以後もこの研究会に若い人々が多方面から集まりましたが、そのメンバーによる研究の成果が本になりました。私自身は出席が悪く貢献度低かったのですが、橋本先生はもちろん、生きのいい若い研究者の皆さんの奮闘には目を見張るものがありました。70年代以来ずっと少なからぬ人々のあいだで静かに熱い関心の焦点となってきたヤミ市。タイトルには「盛り場」とありますが、都市の社会=空間を断絶から再生させるメカニズム、そして歴史的であると同時に歴史を超えて伏在する都市そのものとでもいうべきマトリクス、そうしたものに迫る研究の、ひとつの到達点を示す書物になっています。12月に出たのですが好評のようで、増刷決定も近いと思います。
青弓社, amazon
本の組み立ては以下のとおり。

序 章 ヤミ市――戦後社会の出発点 橋本健二
 1 「戦後」イメージの原点
 2 ヤミ市とは何か
 3 ヤミ市の歴史的意義
第1章 東京の戦後復興とヤミ市 初田香成
 1 闇とヤミの間――用語としてのヤミ市の形成過程
 2 ヤミ市の確立と動揺
 3 インキュベーターとしてのヤミ市――ヤミ市を戦後にくだる
第2章 戦後都市とヤミ市――ケース・スタディ
 1 新橋――サラリーマン盛り場の誕生 初田香成
 2 新宿――ヤミ市から生まれた副都心 石榑督和
 3 渋谷――ヤミ市から若者の街へ 青井哲人
 4 吉祥寺――転機に立つハモニカ横丁 井上健一郎
 5 東京郊外の戦後復興とヤミ市 初田香成
 6 神戸ヤミ市と繁華街の形成 村上しほり
 7 引揚者マーケットの商店街形成――盛岡・桜山商店街を中心に 中島和也
第3章 ヤミ市と戦後文化
 1 ヤミ市の情景――日記に描かれた戦後・東京 橋本健二
 2 物語のなかのヤミ市 逆井聡人
 3 ヤミ市の建築――都市建築の一系譜 石榑督和/初田香成
第4章 ヤミ市研究を振り返る――松平誠氏インタビュー 聞き手:青井哲人/石榑督和 ヤミ市関係文献・資料目録
東京主要部のヤミ市地図 石榑督和

はっきり言ってどの章も面白いのですが、個人的には、まず第1章はヤミ市の都市史的解明としては決定版。それと第3章は今後さらに展開できる観点が満載です。もう少しだけ大きな判型で、もう少し図版をキレイに印刷できていたら、というところがちょっと惜しいかなー。そして、ヤミ市研究といえば何といっても松平誠先生のお仕事が先駆ですが、お身体のお悪いなかでご自宅をお訪ねしてお話をうかがった記録を本書に載録させていただけたことはありがたく、意義深く、本書に厚みをもたらすことになったと思います。
みなさま是非とも手にとってお読みください。この研究会もこれで終わりではないので、厳しいご批判をいただきたく、よろしくお願いします。(新しいメンバーの参加も、いつでも歓迎! 貢献度低い僕が勝手に言うのもアレですが)