谷川竜一さんのピョンヤン探訪報告と、松下迪生さんの台南研究の報告を聞く。第13回都市基盤史研究会にて。

 7月後半〜8月初はもうバタバタでブログ書けませんでしたので、がんばってキャッチアップします。
 さて、都市基盤史研究会って皆さんご存知ですか。京都工芸繊維大学の中川理先生を研究代表者とする科研費基盤研究(A) 「戦前期わが国の都市空間システムに関する歴史的研究」のメンバー他が集まって議論する研究会です。青井は連携研究者のひとりとして、皆勤賞とはいきませんが、都合が許すかぎり楽しみに東京から参加させていただいています。この研究会のよいところは、建築畑にありがちな形而上的思い込みや観念的立論やらをいともあっさりと、「あのなあ、そんなもんはなー」と一蹴してくださるところです。なんてたって「都市基盤史」などという色気もへったくれもない名称の研究会ですからね。しかし、どこまでが「基盤」で、どこからがそうでないのか、などと考えはじめると、これはある種の政治文化論的な含意を孕むなかなか深い問いとなるわけです。ちなみに科研費の区分名称(基盤研究)と研究会の名称(基盤史研究)が紛らわしいのでご注意願います。
 先日(と言ってももう3週間以上前か・・・2013.07.13 Sat.)、第13回の研究会がありまして、京都へ行って参りました。京都駅に着いた時はまあ曇りかなくらいに思ったのに、松ヶ崎駅を出たら最近流行のいわゆるゲリラ豪雨というヤツにつかまり、傘などまるで効果なく、浸水したスニーカーは翌日干したらすっかり変形(破壊)してました(涙)。
 発表者は谷川竜一さんと松下迪生さん。谷川さんからはピョンヤン探訪の報告というきわめて貴重なレポートを聞かせていただきました。民間主導による工業化という植民地期の歴史的基盤(また紛らわしくてすみません)の上に、戦後の国家イデオロギーによる都市開発が重ねられていくシナリオは興味深いのですが、やっぱり土地建物の法的関係や事業の主体・財源といった部分がなかなか難しいのでしょうが突破口なのでしょうね。たとえばあの整然たる集合住宅の足許に差し掛けられた下屋のようにも見える商店群はいったい何なのか? 気になる気になる。
 松下さんの発表は、植民地台湾における北白川能久親王御遺跡の顕彰に関する研究。顕彰、都市、国家、そして植民地支配、というキーワードをぐっと睨みつつ、これはもう鄭成功の開山神社も含めた台南研究というかたちでまとめるのがひとつのフレームだと僕は思いますよ!
 いずれも今後の展開が楽しみな研究でした。念のために申し上げますと、今日は少し文化史・社会史的な感じの報告でしたが、いつもはもっとマッチョな都市建設史というか、政治経済的な空間編成史の議論が多いです。