物質と身体と時間の積層体

sugiex_pstr昨年から毎週月曜日は非常勤でムサビに行っているのだが、昨日(20111121 Mon.)は授業後にMAU M&L(武蔵野美術大学美術館・図書館)にて開催中の「杉浦康平・脈動する本」展(10/21-12/17)を見てきた。杉浦康平は実は神戸芸術工科大学でのうちの奥さんの先生で、授業はいつも曼荼羅の話だったとか(笑)、不可視の格子の演習があったとかっていう話を聞いている。僕は院生時代に建築学科図書館の地下書庫にこもって雑誌をめくってはコピーするという日々を送っていたので、『SD』とか『都市住宅』でもう杉浦デザインが眼に焼き付いているというか、書庫の匂いと一緒に身体に染み付いている気さえする。うちの奥さんは教え子といっても自称落ちこぼれだが、それでも尊敬はしているらしく彼女の好きな『銀花』が本棚に並んでいる。僕の本棚にも『講談社現代新書』はもちろん、鹿島出版会の都市問題シリーズとかSSシリーズとか、あと『エピステーメー』とか杉浦デザインはたくさんあるし、弟子筋の方も含めればたいへんな数になる。日本の現代ブックデザインへの杉浦の影響はとても広く深い。
 展覧会、圧巻でした。本は身体の振る舞いに照応する時間的構造である、本は紙という物質を積み重ねた地層である、本は背で綴じられるという単純な組成をもつ直方体である、故にいくつもの対位法が畳み込まれ、なおかつ再び統合体である、・・・もう杉浦ワールド全開でした。唯一残念だったのは、まさに身体でページを繰るという経験が禁じられていたこと。うーん。でも仕方ないか。
 僕自身は(例の日本列島の時間地図は知っていたものの)平凡社世界大百科の別冊『百科年鑑』(1973〜)に杉浦オリジナル・ダイアグラムが満載であることを最近知り、それが目当てだったのだが、やはりすごかった。世界デザイン会議、ハーバート・バイヤーについては前のエントリでもちょっと書いたが、あのへんからヴィジュアル・コミュニケーションの潮流がはじまっている。ああいうグラフィックを見ていると色々と触発されることも多いし、ネットに疲れた眼にはもう豊穣すぎる。ちょっと集めてみようかなー。