伊根はすごい、でも是非周辺の類例と一緒に見ることをお勧めしたい。

最近いろいろ縁があって漁村づいているが(台湾の澎湖群島・馬祖群島、そして三陸沿岸など)、今回はゼミの合宿旅行で関西を巡るなかに若狭湾地域を入れた。これは、かつての神代雄一郎研究室のデザイン・サーヴェイをフォローしたいという目論みに関連している。漁村といってもそれぞれ関心を持ったきっかけはまったく別だが、そうとも思えなくなってきた。これらの漁村で考えていることが急速にリンクしはじめている気がするからだ(そのことはまた追々)。
ところで、いわゆる伊根の舟屋群は数年振りなのだが、今回は伊根町周辺と舞鶴市の集落も巡ったので色々発見もあり面白かった。

R0029430平田・亀島(伊根町)。
これが伝建地区と朝ドラで有名ないわゆる伊根の舟屋群。この舟屋群の背面に道路が通り、その山側に主屋(母屋)が並ぶ。この道路が1931〜40年に、主屋+庭(+倉)+舟屋が並ぶ短冊状の屋敷地を串刺しに貫くように開かれたものであることはよく知られているとおり。このとき海岸を埋め立てて宅地化し、舟屋と倉を海岸側へ移動させて道路復員を確保した。

R0029509日出(伊根町)。
ここ、上記の平田のすぐ南隣にある集落で、砂浜にプリミティブな舟屋がいくつか見られる。重要なのは、平田・亀島の伝建地区とは違い、主屋の背面に道路を通す余地がじゅうぶんに確保できたためであろう、主屋+庭(+倉)+舟屋のセットが展開したロットが原型をとどめていること。この地域の元来の集落構造を想像できる貴重な集落だ。

R0029523 大島(伊根町)。
またちょっと南下したところ。道路貫通型。道路側と浜側とで大きなレベル差があるため、2〜3層・大型・住居併用の舟屋が立ち並んでいる。

R0029541長江(伊根町)。
さらに南下した海岸。道路貫通型。舟屋はプリミティブながら産業化ヴァナキュラーの佇まい。

R0029598田井(舞鶴市)。
伊根から、宮津、由良、舞鶴をへて、成生岬を目指していくと、途中に田井がある。連棟形式の舟屋は、火災をきっかけに共同建て替えをしたものという。

R0029610成生(舞鶴市)。
北上すると成生というきわめてコンパクト・高密で美しい湾頭の集落がある。海岸線に沿ってリニアに延伸した集落ではないため、海岸線への直接的アクセスを持たない家が多い。にもかかわらず漁業経営への全戸平等参加などの民俗が知られており、したがって海岸そのものが共同的性格を持つものと考えられる。主屋も規模がほぼ同じ。しかしまあ、よくぞこれほどの集落が戦後をくぐり抜けてきたものだと驚嘆する。