たまふゆる冬でありますよう。

 住宅総合研究財団より『すまいろん』冬号が届く。特集は大月敏雄さんが担当された「特集=近居・隣居のススメ‐「住宅に住む」から「地域に住む」へ」。僕は昨年ゲスト編集委員として委員会にお邪魔していて、担当させていただいた特集「動くすまい」の実質的な仕事がほぼ終わりに近づいた頃に、この「近居・隣居」特集の企画が決まったように記憶している。会議でお話をうかがいながら大月さんらしい、また『すまいろん』らしい特集だと思った。大月さんによると、従来の住宅政策では人間を「住宅に住む」生き物と仮定し、また「住宅に住む」集団として家族を描いてきた。住宅計画はこのパッケージの状態の調査と改善を仕事としてきたというわけだ。しかし、むしろ家族が地域のなかにどのような関係性をもって住みうるかという観点から住まいや街の空間を捉え直す方がずっと理にかなっている。
 各方面で70年代の問いが再帰しつつある。と同時に、ある意味で人類史の普遍と近代の特殊をいっしょにつかまえ直す作業が予感されていい。なんだか速度も増している。
 ところで同号には「「すまいろん」休刊のお知らせ」という白い紙切れが一枚入っていました。僕はこの雑誌には読者・書き手・編集担当として関わらせていただく機会に恵まれました。お世話になった皆さま、ありがとうございました。貴重な貴重な雑誌だと思っていました。悲しい。
 たまふゆる冬でありますよう。人類普遍の冬の祈り(折口信夫中沢新一)。