2014年度 青井研究室の修士論文

  • 林直弘「同潤会と戦前・戦中期の東京郊外住宅地形成:工業都市・川崎における「官」「公」「民」の住宅供給とその政策史的背景」
  • 西村拓真「1950〜70年代大阪における都市再開発とRIA:法制度/職能/共同体の相互規定的な変転から」
  • 野口努「戦後日本における地方建築家の散種と再生産:地方設計事務所開設者の学歴・職歴を視角として」
  • 滝沢皓史「伝統的建造物群保存地区における許可基準の運用実態に関する研究:川越重伝建地区の「裏」の変容を事例として」

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  • 林直弘「同潤会と戦前・戦中期の東京郊外住宅地形成:工業都市・川崎における「官」「公」「民」の住宅供給とその政策史的背景」・・・我国初の国家的住宅供給機関たる同潤会は、関東大震災後の応急復興住宅、RCアパート、勤人向木造住宅の供給を経て、1930年代後半以降は労務者向木造住宅地開発へと主軸を移していく。本論文は、工業都市川崎を対象に、戦時下の住宅大量供給という課題に対して、同潤会がその直営事業のみならず、神奈川県、川崎市、さらには官民合弁の住宅会社による住宅供給、そしてこれらを統御した国家的住宅供給計画策定のそれぞれに異なる仕方で関与していたことを復元的に跡づけることによって、従来看過されてきた同潤会の社会政策史的な役割と意義に新たな光を当てている。
  • 西村拓真「1950〜70年代大阪における都市再開発とRIA:法制度/職能/共同体の相互規定的な変転から」・・・日本における都市再開発事業の揺籃期にあたる1950〜70年代において、関連する法制度、専門的な建築職能像、共同体としての地権者組合の3つの要因が相互に作用・規定しあいながら一定の体制を築き上げていく歴史過程を、先進地・大阪における事業の展開に沿って跡づけている。そして、そのなかで大きな役割を果たした建築設計事務所RIAにおける「建築家共同体」的な職能理念の模索からコンサルタント業務の分離独立に帰結するまでの展開を歴史的に解明・評価した。
  • 野口努「戦後日本における地方建築家の散種と再生産:地方設計事務所開設者の学歴・職歴を視角として」・・・近代日本の建築設計は官庁営繕や大企業営繕が優位にあり、一方で建築家に依らない町場の工務店による設計施工も根強く存続しつづけ、とりわけ地方にあっては建築家が独立の設計事務所を構える例は戦前まで極めて希有であった。本研究では、こうした状況からどのようなプロセスをへて地方に建築家が増えていくのかを、事務所便覧を資料とし、開設時期・開設地ならびに開設者の学歴・職歴に着目して統計的に分析することにより、中央から地方への散種と地方での再生産といった史的展開を示し、建築教育史・建築生産史に新しい視座と知見を提供している。
  • 滝沢皓史「伝統的建造物群保存地区における許可基準の運用実態に関する研究:川越重伝建地区の「裏」の変容を事例として」・・・町並み保存は、復元・凍結を基本とするリジッドな保存と、変更を許容しながら環境のある質を継承するダイナミックで柔らかい保存との二重性をつねに抱え込んでおり、重要伝統的建造物群保存地区では、これらは「伝統的建造物の修理」にかかる基準と、「非伝統的建造物の現状変更」に関する許可基準とに対応している。本研究では、川越を事例として後者の運用実態を実証的に解明する作業を通じて、町並み保存論に都市組織論的な視角と方法を再導入し、あらためて柔軟な動的保存のあり方について検討している。