年報都市史研究・特集「都市と危機」

201304_annales 都市史研究会編『年報都市史研究〈20〉』(山川出版社、2013年4月)が明日刊行の運びとなります。きっと私のせいで遅れたのではないかと大変心配しておりますが、ひとまず胸を撫で下ろしております。ご迷惑をおかけしたとすれば関係の皆様に深くお詫びします。
 特集は「都市と危機」。言うまでもなく東日本大震災を契機に、都市とはそもそもほとんど原理的に危機を内包した存在だったのではないか、という問いかけに発して組まれた特集であり、2011年12月3-4日に開催されたシンポジウムをもとに、全発題者によって書き下ろされた力のこもった論考が集められています。巻頭には伊藤毅先生による鋭い問題提起も掲載されています。
 青井は三陸沿岸漁村の明治・昭和両度の大津波からの復興について書かせていただきました。三陸津波の復興史について現段階での決定版とするつもりで力をこめて書きました。東日本の津波被害は、これまでに建築学津波をほとんど無視してきた経緯もあり、多くの専門家が過去の被害と復興について歴史的なパースペクティブを必要としましたね。これまでのところ高台移転と原集落復帰という集落地理的・防災計画的な関心からの理解はそれなりに深まりましたが、この論考では、漁村集落の社会構造にできるだけ迫り、村落の「社会=空間構造」が災害+復興という切断的な出来事に際してどう動き、組み替えられたのかという視点でできるかぎりの推論を展開しました。また、とくに昭和については1930年代初頭の国家的な(中央官僚による)社会政策の転換がこれに大きく作用したことを示唆しています。これは1930年代が、災害復興にかぎらず、日本の社会工学的システムの確立過程の一起点ともいえる時期であることを私たちはあらためて確認しなければならないというメッセージでもあります(それが確立するのが1970年前後であり、1990年代中頃にはすでに動揺しはじめたわけで、はっきりいえば私たちにはそれをどう解体するかという問いが突きつけられているわけです)。ただ、本稿はまだ基本的な公刊資料と岩手県行政史料の編纂本を使うにとどまっており、その後、研究室のMさんの修士論文によって行政文書と新聞記事を踏まえた検討が進められましたので、どこか別の場所でまた改稿を発表しなければならないとも考えています。