建築雑誌2012年10月号 特集 耐震の今:成熟から拡張へ Earthquake-Proofing Now: From Maturity to Expansion

1210-hyoshi-thumb-363xauto-46本号特集のテーマは建築の耐震。いわゆる新耐震基準が1978年宮城県沖地震を契機として定められ、その改正が兵庫県南部自身を契機に行われたように、耐震の技術と基準はこれまで実際に発生した地震被害を取り込むかたちで引き上げられてきた。そこに免震・制震などの新技術が導入され、またストックの耐震改修も徐々に進むなど、日本の耐震は「成熟」へのプロセスが問われるフェーズに来ていたと言えるだろう。
東日本大震災はその水準を否定することはなかったが(見えにくい問題は色々あるはずだが)、そのかわり視野の「拡張」を強いる面が大きい。もちろんそれは、たんに耐震技術とその市場の拡張を意味するのではなく、むしろ扱う領域の拡張であり、それはむしろ技術的には単線的な水準の引き上げではなく、多方向に広がる問題、一般論ではなくコンテクスチャルな複合的問題のリアリティを合理的に把握するリテラシーを要請するのではないか、というのが特集を通じて感じたこと。2月号で特集を予定しているリクス・コミュニケーションの問題にもつながる。