「地割」について

加藤雅信『「所有権」の誕生』(三省堂、2001)を読んだ。遊牧民とか、日本の木地師木地屋)とか、所有権発生以前、あるいは所有権を超える人々にもふれながら、その成立根拠を人類学的に考えたもの。読んでてちょっと発見だったのは、「地割」という言葉のこと。
つまり、ある一定の土地を公有(or共有)とし、これを区分して人に使用させるが、一定期間毎にくじ引き等で使用者の割り直しを行うことを、「地割」と呼ぶ系譜があるらしい。琉球ではむかしから土地私有制がなく、王の領地をこうした方法で人々に耕地として使用させていたという。「地割制度」という言い方もある(「割替制度」とも)。そこで思い出すのは築地市場で、都有の「土地」を仲卸商たちに配分して使わせ、数年に一回ずつクジ引きで割替をする。占用が占有にならないようにし、公有を維持するにはたしかに有効な方法だし、同時にこれは市場の衰退を防ぐ方法でもある(廃業等でコマに空きが生じても、割替時に配分競争に投げ込まれて再活性化される)。で、築地市場では実際に「地割」と言っていたと思う。それから縁日のテキ屋も露店を並べるとき「地割」という表現でコマ割をする。ヤミ市のマーケットもそう。この場合は割替えはたぶんないと思うけど。いずれにせよ私有ではない割り付けのときに「地割」という系譜があるんじゃないかと思った。
もちろん、普通に土地私有を前提にした町割でも「地割」と言うだろうし、近世の「地割」「建地割」と呼ばれる図面はなぜか断面図のこと。うーむ。どなたかこういう言葉の全体像を把握している方いらっしゃいませんか。