Mega Village of Taipei


ちょっと行ってきました。建築学会の計画委員会春期研究集会(布野委員長)も今年で3年目。今年はやや地味な企画かと思いましたがそれは僕がこの国にもう11年も通っているからで、よく考えたら多くの参加者にとっては新鮮なんですね。実際、非常に好評だったようです。企画運営をまとめた黄蘭翔さん、本当にお疲れさまでした。謝謝。
さて、僕も参加者の皆様に台湾の建築や都市についていろいろ質問されたのですが、問われるままに答えていますと、(だいたいの方は存じ上げているのですが)初対面のある方などはひとしきり納得した後に、「いやそれにしても完璧な日本語ですね」と感心しておられました。ん? ああそうか、それは喜ぶべきことなんだなと理解するのに2秒かかりました。
上の写真は李祖源設計「Taipei 101」から見下ろした市街地の俯瞰景です。屋上の(違法な)増築部分の屋並みは、まるで山本理顕の保田窪団地が都市全体に増殖していったかのような見事な風景です(むろん保田窪の論争的プランニングとは無関係です、ご容赦を)。コールハースはマンハッタンをメガビレッジと呼びましたが、これもまたある種のメガビレッジです。それは、ある方のある質問にお答えしているときに気づいたんですが、つまり不動産形態に根ざした集合的表現だということです。
台湾の市街地では「透天厝」と呼ばれる不動産形態が一般的です。透天厝というのは、基本的には3-4層程度の連棟式の店舗住宅で、1軒の所有者が壁で挟まれた1間分(間口は5-6m前後)を、1階から最上階まで垂直に所有することを前提につくられ、実際にもそのように分譲されています。だからたとえば10間が連続している長い建物なら、所有は10個に切れていて、つまり屋上も10個に切れているのでそこに増築される屋根も1つの大屋根にはならず、10個の屋根がちょっとずつズレたようになる。色もさまざま。
一方、5ないし6層以上の建物はほとんどがフロアで水平に切れた集合住宅になっていますが、この場合はさすがに屋上はみんなのものかというとそうではなく、最上階の所有者が所有することになっています。ですから、屋根の大きさは、ここでも住戸の大きさに等しくなるわけです。
太陽光線の輻射熱を少しでも和らげようと、また少しでも空間を増やそうという人々の欲求が、こうした不動産所有の形態に規定されて発露した結果があの風景なのです。まあそれほど気合い入れて言うほどのことでもないですが。