建築雑誌2013年10月号・特集「アフリカ・アトラス:サブサハラと日本の都市・建築 Atlas of Sub-Saharan Africa for Japanese Urbanism and Architecture」

cover_201310 連投ご容赦(このところブログ書けず・・・建築雑誌の報告がたまっておりまして)。10月号は、たぶん建築雑誌はじめてのアフリカ特集。担当は、中島直人(慶応義塾大)。そして、アフリカを専門とする若い研究者、志摩憲寿(東京大学)、岡崎瑠美(フランス国立科学研究センター)、清水信宏(慶應義塾大学)の3氏には企画の初期段階から全面的に御協力いただいた。あらためて感謝したい。

 前言(これはいつも編集長が書いている)に書いたとおり、ここでのアフリカとは「サブサハラ」のことで、つまり北部のいわゆるマグレブは除いている。マグレブはまあ地中海世界あるいはアラブ・イスラーム世界といったかたちで理解可能だが、サブサハラ(サハラ以南)は正直なところ文化地図のイメージが湧かないし、ましてや建築・都市となると・・・しかしこのサブサハラこそがいまネオリベラリズム資本主義(=帝国主義)の国々による資源獲得の触手が延びている地域。そこでは開発を伴わない成長が進行する傾向にある。資源を売り、その対価を手にした者たちが消費者となることでGDPが上昇していく(にすぎない)からだ。都市化についていえば、中野豪雄さんデザインの表紙に示されるように、極端なメガシティが次々に成長拡大して、極端に高度化したコアと、極端に広大なスラムが生み出される、ということになりがちだ。より踏み込んだサブサハラのプロファイリングとしては、編集協力者でもある志摩憲寿・岡崎瑠美・清水信宏の3氏の作成したデータを、中野事務所でゴリゴリと制作していただいた「アフリカルテ」にグラフィカルにまとめられている。
 さて、日本の建築学術はアフリカ(サブサハラ)にどう関わりうるのか?
 現状ではこの問いに対して、決して豊かな質と量をそなえた介入の沃野が開けてくるわけではない。が、レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』の訳者としても知られる文化人類学者・川田順造氏のインタビューを皮切りとし、最後のウスビ・サコ・松原弘典・山形浩生の3氏による座談会で締めくくられる本特集の全記事を通して、じわじわと日本がどうアフリカに関わりうるのか、そのフィールドの所在と倫理みたいなものが相関的に見えてくる気がした。
 そして(実は担当している2012年1月号から個人的にはずっとある意味で同じことを考えているのだが)日本の建築が培ってきた特質が、ここでも歴史的な批判の眼に晒されているのだろうということが読後に実感される。