建築雑誌2012年12月号 特集 東日本大震災 復興のアポリア:居住地再建の諸問題 Aporia in Recovery from the Great East Japan Earthquake ─Issues in Domicile Rehabilitation

12_cover_ver2 私たちの編集委員会の任期中に担当する2012年1月号〜2013年12月号の24冊のうち、12冊目が出ました。今号担当は森傑・竹内泰・大沼正寛・末廣宣子の四方です。

これまでの12冊では、9冊が震災関連特集号となっていて、そのことには批判的なコメントをいただくこともあるのですが(建築の領域は広いし、読者層も広いのだからと)、『建築雑誌』はじまって以来のさまざまな災害特集のなかでも今回の一連の特集は違う意味を持っていると思います。東日本大震災は、復興の技術論だけではなく、基礎論的な問い直しが必要な災害になりました。それは社会システムが転換を迫られる過渡期という歴史的な位置に由来する事態ですから、私たち編集委員会としても、狭い意味での災害特集ではなく、震災を契機とした社会システム再考特集を12冊くらいつくるつもりでやっています。読者の皆さんにも是非そういう視点で読んでいただきたいと思っています。

そうしたなかで、今回の12月号と次回の2013年1月号は、それぞれ津波被災地と福島原発事故被災地の現場に最も肉迫したものになります。現場を動かしてしまっている構図、動けなくしている矛盾が、専門家と市民の困難な経験とともに浮かび上がります。歴史的な記録となるでしょう。

振り返ってみますと、2012年1月号で3.11前夜までの東北の歴史的文化的な「地図 map」を描いた後に、3.11が建築学に与えているインパクトを「分野 field・視座 viewpoint」別に把握し、議論の軸を立て、粛々と記録することに徹してきたわけですが、年を跨ぐ12月号+1月号+2月号はあらためて被災後1年半のなかで具体的に浮かび上がりつつある諸問題を地域という枠組みにおいて再び「地図 map」化する試みとなります。その後、3月号は復興の「原論 principle」の探求とし、震災関連特集にはいちおう区切りをつけることになっています。

あっという間の1年でしたが、まだしばらくは踏ん張らねばなりませんので応援よろしくお願いします。