六年振りの“母校”にて:KDU-ED Talk Session #2

20120627 Wed. 神戸芸術工科大学 環境・建築デザイン学科のトークセッション・シリーズ「建築から世界はこんなふうに拡がっていく」(全6回)の第2回ということで、「やわらかい都市のなりたち:都市の時間的振る舞いの学へ」と題するレクチャをしてきた。前回小玉祐一郎先生の企画で呼んでいただいたのは1996年なので6年振り。今回のコーディネータは花田佳明先生。
昨日のレクチャでは、僕が2008年4月に明治大学に移ってからの4年間、研究室で学生たちとやってきた都市関係の調査研究の乱雑な作業群を、いったんティポロジア(建築類型学)の考え方を軸に整理してみようとした。つまり、ティポロジアの方法的体系は、台湾でのサーヴェイによってどのように修正的に書き換えられるか、また日本の文脈では「建築類型学 tipologia edilizia = building typology」がどのように再定義したら有効でありうるか(陣内秀信先生はティポロジアを東京に適用しようとしたが建物 edificio が連続していないので、根拠を地形 topografia にまで後退させてしまったが)、といったことを気にしながらスライドをまとめた(かなり荒削り+未完ではあったのだが)。実は月曜日にノドを酷使したせいで声帯が炎症を起こし、声がほとんど出なくなっていたので超不安だったのだが、昨日のレクチャでは何とか断末魔の呻き声のような頼りない擦れ声のようなものを絞り出し、ごまかしごまかし100分くらい話してしまった。話しはじめるとつい乗ってしまい、止められなくなるのだが、聴衆の皆さんはさぞお聞き苦しかったことだろう。ご容赦を。

たぶん院生が多かったのかなと思うが、このオッサンが都市と建物をどう面白がっているか、面白がろうとしているか、日本の都市や建物はどうやら世界的にかなり希少な現象をいかにたくさん生み出してきてしまったか、といったあたりがそれなりに伝わった感触はあり、よかったなと思う。街を動かしているごく当たり前の大切な何かが、ちゃんと発見され議論され知識になる、そういう可能性はまだまだいっぱいあるよ。

先生方からの質問は、言葉の整理とか論理的な体系化の上で「ひっかかる」ポイントを率直に指摘いただいて、たぶん私たちが分かったつもりでレトリックに訴えて流していた点などを鋭く衝かれた、という感じだった。今後また学生たちとも議論していきたい。

終了後に(あの『テレスコープ』の)鈴木明先生が挨拶に来てくださり、面白かったって言われた後、おもむろに、〈テキ屋〜トビ職〜露店〉の話ってさ、コールハースの『錯乱のニューヨーク』のコニーアイランドのところが似た話だよね、って言われた。もうほとんど声出なかったので議論できなかったのだけど、なるほどと思った。つまりマンハッタンに資本が向く以前には猥雑きわまる興業が必要だった、ちょうど湊川(神戸)の新開地がまず露店を集め後にそれを整理したように、あるいは戦後の焼跡にまずヤミ市が簇生し、やがて整理されて、ビル群に置き換えられていったように。(鈴木先生の意図は未確認)

芸工大の皆さんありがとうございました。僕が助手をしていた当時学生さんだった卒業生S君・Iさんの顔も見れたし、人間環境大学時代の教え子でいま芸工大の博士課程にいるF君とも会えてよかった。しかし何といっても花田先生には色々と最後までお世話になり心より感謝。