9月26日/布野修司先生還暦記念アジア都市建築研究会+祝賀会+2次会+3次会+4次会

 昨日、我々の師・布野修司先生の還暦記念行事が京都駅前のキャンパスプラザ京都で行われた。『カンポンの世界』冒頭にあるとおり、布野が東南アジアを歩きはじめたのは1979年。今年でアジア遍歴30周年ということになる。30年。布野が京都大学に来たのは1991年で彼が42才の時。今からは想像できないほど眼はギラギラし、目線が合おうものなら背筋が凍り付いて身動きがとれなくなるほどであった。気がつけばその頃の最初期の学生がいまや40才前後。先生は還暦で人生が一回廻り(おめでとうございます)、私たちも一世代年をとったことになる(こりゃまずい)。
 第1部は研究集会。私たち布野チルドレンだけでオーガナイズド・セッションという初めての機会。早い話が学芸会じみた会ではあったのだが、この機会に恥をさらしてもよいから現在の私たちが何を考え、どんな戦略を立てようとしているのか、基本的なスタンスにかかわるものを出し合ってみようというのが主旨だった。
 第2部は祝賀パーティで、設計者・プランナー等として活躍する弟子たちの実践報告も行われた。設計に携わるOBは実はとても多い。駆けつけて下さったゲストの先生方は会場を見渡しては口々にこれだけの教え子をよく育てたものだと感心しておられた。先生方のスピーチの後、最後にマイクを握った布野先生の挨拶には、笑い転げたり、ほろりと来たり、それにちょっと複雑な感情がこみ上げた。
 飲み会は2次会、3次会、4次会と続き気がつけば朝5時だった。驚いたことに祝宴後の2次会にも80人が残り、朝までなかなか人数が減らない。西川幸治研究室時代からの先輩方、そして旧友とも色々話した。滋賀県大布野研の若い院生たちとも喋って面白かった。

 会場で冊子『布野修司先生業績目録』が配布された。業績だけで100頁に迫る量だが、後半の140頁くらいが記念論文集となっている(論文13編は「続きを読む」でご覧ください)。寄せられた論文などをもとに、第1部の研究集会(シンポジウム)のプログラムを企画し、私がモデレーターとして2つのセッションの進行をやらせていただいた(1では田中禎彦さん、2では山本直彦さんと一緒に)。壇上でキレ気味になるというお恥ずかしい一幕もあったり、決して思うようにいったわけではないが、ある意味で明瞭に私たちの現在の断面図が浮かび上がったと思う。ご批判は会場にいらっしゃった村松伸先生、渡辺豊和先生、そして布野先生からもいただいたとおり。ありがとうございました。
 以下がプログラム。

布野修司先生還暦記念 拡大版アジア都市建築研究会「アジア都市建築研究の現在」


■セッション1 建築・都市と権力:世界を知ること、描くこと
支配・被支配。コロニアリズム。近代化、都市化。これらを背景に、都市・建築を知ること、そしてそれを描くこと、つまり世界像の構築をめぐる諸問題と戦略を考える。
発表1:韓三建(韓国 蔚山大学)
発表2:山田協太(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科)
ディスカッション:韓三建・山田協太・山根周(滋賀県立大学)・佐藤圭一(尚絅大学
モデレーター:青井哲人明治大学)・田中禎彦(文化庁


■セッション2 住まうことのダイナミズム:生成と計画
住まいや都市組織が生きているということに、いかにアプローチすべきか。ダイナミズムのなかでの持続とは何か、計画はどのように組み立て直されるべきかを考える。
発表3:脇田祥尚(近畿大学
発表4:田中麻里(群馬大学
ディスカッション:脇田祥尚・田中麻里・牧紀男(京都大学防災研究所)・竹内泰(宮城大学)・柳沢究(神戸芸術工科大学
モデレーター:青井哲人明治大学)・山本直彦(奈良女子大学


■全体討論

布野修司先生還暦記念論文集


I.都市論・住居論の射程
青井哲人(明治大学) 都市発生学のためのエスキス:都市組織の動態に関する基礎的考察
山田協太(京都大学) 植民都市研究、開発と近代
牧 紀男(京都大学防災研究所) 災害とすまい:アジアの自然災害


II.都市と建築の形成史
山根周(滋賀県立大学) インドにおけるパトリック・ゲデスによる都市計画:バローダ Baroda 旧市街における保存的外科手術
Kyota YAMADA(Kyoto University) Dutch Overseas Expansion and Laying out of Colonial Cities : Materialization of Simon Stevin's Ideal Model for the Early Capitalist City and its Transformation
佐藤 圭一(尚絅大学) 19 世紀における南アフリカ植民都市の空間形成とその変容
PANT Mohan Moorti(Purbanchal University) SETTLEMENT BLOCKS AND PATTERN OF PLOT DIVISIONS OF CENTRAL UJI, UJI CITY.
韓三建(蔚山大学 建築学部) 関野貞と滅んだ国の建築史


III.都市居住・生活空間の現在
竹内 泰(宮城大学) 日本都市居住形態試論:インターネットカフェから視る
脇田祥尚(近畿大学) プノンペン(カンボジア)における漸進的開発のための建築・都市計画手法:都市履歴、街区居住、自律更新
田中麻里(群馬大学) トゥンソンホン住宅地(バンコク)におけるコアハウジングの増改築プロセス:最小限のコアからつくる住まいからみえてくること
柳沢 究(神戸芸術工科大学芸術工学研究所) ヒンドゥー教の聖地から世界の観光地へ:ヴァーラーナシーにおける観光開発とリビングヘリテージの関係からみる「融合寺院」の可能性
Samitha Manawadu(University of Moratuwa) PRESERVATION OF HISTORIC STREETSCAPE: REFURBISHMENT OF PRIVATE HOUSES IN WORLD HERITAGE SITE, GALLE, SRI LANKA