澎湖群島調査報告 その3 土地・空間・技術・・・マトリクスの限定と類型の生成について考える。

吉貝は面白い。また行きたい。というのはこんなことを考えるのがとても楽しいから。
P8161418(1) こういう三合院が・・・

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(2) こうなったり・・・

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(3) こうなったりしている。

お分かりですね。(1)の三合院は間口10m前後、奥行13m前後。院(中庭)を囲む三つの建物でできた「凹」字型のまとまりが1ユニット(ひとつの三合院)。で、(2)はその敷地を左右に二つに割って間口5m前後の3層×2棟に建て変わったもの。(3)は敷地の1/4の部分が建て変わったもの。エイリアンだ。
こうした変化の類型学を構築せよという指示を学生3名に出す。制限時間は2時間。翌朝2時間でその整理。彼らも面白がっていたな。
三合院がたくさん集まったこの集落は、それぞれの家で財産分与がおこるたびに土地が分割される。離島部なので不在地主になる人も多いが、住むのであれば床面積をかせぐために2層、3層、4層と積み上げる。間口が1/2になると、求心的な屋敷型からリニアな町家型に変わり(5mというのは典型的な町家の間口サイズ)、1/4になるとタワー状になる。工法は?・・・3層までなら何とか珊瑚石を積み上げる伝統的な組積造でいける。ただし床板だけは鉄筋コンクリートのスラブにすることで水平剛性を上げ、またバルコニーの張り出しを可能にする。・・・というように、空間と技術の変転もこの類型学的な変容過程に随伴している。
注意したいのは、土地・空間・技術のマトリクスに対して、あらゆる組み合せを数え上げるような確率論的な世界にはなっていないということ(これは現象の類型的記述につきまとう落とし穴なので要注意>学生諸君)。たとえば4層でも珊瑚石にこだわるという人はいない←危ない。また土地が1/4なら寸法1/2の三合院形式で建てればよいと考える人もいない←住めない。世界はもっと可能性を絞り込むようにできている。諸元が結びつき合って(互いに他の選択を絞り込んで)パタンを生成しながら変容するのだ。それと、こういう観察がクリアにできるのは、元来の三合院があらゆる面でとても規範的・定型的であり、またその断片や変異体がもとの全体との関係をつねに保存しているからだ(区画整理とかやったら分からなくなる←やらないけど)。このことも重要。
僕はこういうことを考えるときが一番世界に触れている気がします。じゃあそれはどういうことなのか。ちゃんと考えをまとめなければならないと最近思っています。

(オマケ)吉貝のお気に入り写真集。
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