さらにつづき。

14日はすべての仕事を終えて、気分よく寧夏夜市にて妻と妻の妹と3人で飲む。うちの奥さんはこの1週間ほんとによく活躍してくれたので、3日前の誕生日を祝いつつ、うまい台菜とビールでねぎらう。
1週間ぶりに肩の荷が下りたわれわれの前をひっきりなしに中国人旅行客が通ってゆく。後ろではやはり中国の夫婦が高梁酒で乾杯している。ついこのあいだまではありえなかった光景だ。やや複雑な感慨に襲われる。台湾は岐路に立っている。
台湾の街もこの十年ほどのあいだに色々な変化を経験してきた。この夜市のある寧夏路の向こうには、建成圓環と呼ばれるロータリーの円形広場を占拠した見事な高密バラックの夜市があって台北名物のひとつだった。何というか、ペラペラの「ルッカ」という感じだったのだ(写真など見つかったら貼ります)。ところが衰退に加えて火災もおこったため再開発計画がおこり、かの李祖原設計のどうしようもない円形ビルになった(2003年のこと。僕はかつての圓環についに一度も足を踏み入れていない・・・嗚呼)。いうまでもなく大失敗に終わり、このビルはいまや新品のまま廃墟同然なのだが、かつて圓環で商売していた人たちの一部は寧夏夜市に受け入れられて生きている。われわれが飲んだ店の主人が言っていたとおり、焼けたって放っておいてくれさえすればまたあっという間に再生する力くらいはあっただろう。まあもともとバラックみたいなものなんだから。いや実に惜しい。これと並んで、台北では萬華(艋舺)の龍山寺前に広大な廟前市場があったが、これもクリアランスされて、いまやひどいことになっている。すでに全国の屋台を一掃してきた日本人がこういう趨勢を批判するなど奇妙には違いないが、台湾人があまり無批判に企業型・官僚型の都市を望むとは思えないのである。