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青井哲人著・張亭菲訳(中国語)『彰化一九〇六年:一座城市被烙傷,而後自體再生的故事』ようやく手もとに届く。

彰化 一九〇六年:一座城市被烙傷,而後自體再生的故事青井哲人著・張亭菲訳中国語大家出版(台北)2013年10月 自分の怠惰のためにずいぶん長い時間をかけてしまったのだが、『彰化一九〇六年:市区改正が都市を動かす』(アセテート、2006)を大幅に増補し…

熱帯雨林からサバンナに出てロジカルタイピングを身につけた我々ホモサピエンスについて。山極寿一『家族進化論』より。

研究室のサブゼミ(読書ゼミ)は課題図書を4冊指定して、4グループがそれぞれを読んで発表、ディスカッションし、さらに各グループの判断で次の読書や調査に展開してゆくというやり方をとっているのだが、家族社会学のグループが選んだ2冊目が山極寿一『家族…

『多木浩二と建築』(『建築と日常』別冊)を読んで。

編集者・長島明夫さんの『建築と日常』の別冊『多木浩二と建築』が刊行されたのは4月の上旬のことだったか。色々バタバタしてなかなか拝読できなかったのだが、ようやく(通読とはいえないものの)ほぼ読了。大変な力作である。膨大な著作目録、そこに挟み込…

年報都市史研究・特集「都市と危機」

都市史研究会編『年報都市史研究〈20〉』(山川出版社、2013年4月)が明日刊行の運びとなります。きっと私のせいで遅れたのではないかと大変心配しておりますが、ひとまず胸を撫で下ろしております。ご迷惑をおかけしたとすれば関係の皆様に深くお詫びします…

柳田国男と産業組合:藤井隆至氏の評伝ならぬ評伝を読んで

ちょっと前に、藤井隆至『評伝 日本の経済思想 柳田国男:『産業組合』と『遠野物語』のあいだ』(日本経済評論社、2008)を読んだ。よく知られていることとは思うが(僕は不勉強だった)、柳田国男(1875-1962)は、東京帝国大学で農政学を修めた後、1900年…

歴史とは種々の出来事が綴り合わされた一筋の長い連鎖にほかならぬ(大江新太郎1924)。

90年前に書かれた感動的な文章に出会って涙が出たので書き写しておく。(旧漢字・旧仮名使いは適宜今日的に改める) 一体、歴史というものは、昔から今日までの長い間に起った、種々の出来事が綴り合された一筋の長い連鎖にほかならぬ。その一つ一つの出来事…

『3.11/After 記憶と再生へのプロセス』が届いていました。

今日久しぶりに研究室に行ったら色んな郵便物やら書類やらに混じって、五十嵐太郎監修/メディア・デザイン研究所編『3.11After 記憶と再生へのプロセス』(LIXIL出版 、2012)が届いていました。中谷礼仁、宮本佳明、今村文彦、山崎亮といった方々の講演が…

吉田五十八設計・惜櫟荘(熱海岩波別邸, 1941)70年目の解体修理(新建築住宅特集 2012年8月号)

先週新建築住宅特集2012年8月号が届きました(興味深いリノベーション特集です)。青井は「「明朗さ」の背後にあるもの:吉田五十八「惜櫟荘」70年目の解体復元」(p.96-97)を寄稿しています。 岩波茂雄のために吉田五十八が設計した熱海の別邸・惜櫟荘(せ…

都市と都市/復元思想の社会史

最近どうも身体がフラッとしたり、逆にすごく重かったりで、地面を歩く感覚がヘンです。疲労でしょうね。それと建築の本を読む気力がめっきり減退してしまって、SF的な小説ばかり読んでる。これが妙に自分の身体感覚と合ってしまって抜け出せない。まずいな…

彰国社『復刻・デザインサーヴェイ」刊行/明治大学神代雄一郎著作アーカイブス公開中

『建築文化』誌に1968年から73年にかけて掲載された、明治大学神代研究室ならびに法政大学宮脇ゼミナールによるデザインサーヴェイが、当時の誌面そのままに復刻されました。巻末には当時の『建築文化』編集長・田尻裕彦氏による簡潔な文章「「デザイン・サ…

建築論争の所在 CiNiiで公開

『建築雑誌』2011年2月号(特集:建築論争の所在)が刊行1年たちCiNiiで公開されています。山口廣先生インタビュー、隈研吾×岡崎乾二郎 対談が印象深い特集でしたが、わたしの渾身の寄稿も読めますので是非。 青井哲人「戦後建築論争史の見取図〜とくに「巨…

堀田善衛『方丈記私記』

20120204 Sat. 建築雑誌5月号むすびの座談会@田町。面白かった。議論をしていて、特集タイトルを微妙に(しかし大きく)変えるきっかけをいただいたりしたくらいだから。 20120206 Mon. 10+1 website 牧紀男さんとの対談(昨年のこれの1年後の続編という位…

村が消えた

本田靖春著『村が消えた:むつ小川原 農民と国家』(講談社文庫)はすごい本です。満州に動員され、引揚後は六ヶ所。二度の開拓に人生を費やした農民たち。満州よりはるかに厳しい条件での六ヶ所開拓は辛酸を極め、本書の中心的な舞台である下弥栄村(この名…

建築が相対化される場

今年から京都工芸繊維大学の中川理先生を代表とする科研費の研究会に加えていただき、昨日は3度目の京都だった(20111112 Sat.)。メンバーのなかに小野芳朗先生がいる。『<清潔>の近代:「衛生唱歌」から「抗菌グッズ」へ』(講談社選書メチエ、1997)、…

建築雑誌2011年11月号届く。特集 Designing Nation, People and Land: vol.1 Tohoku as Archives

中谷編集委員会に客分の編集担当として参加させていただいた建築雑誌11月号が届いた。11-12月号の連続特集「国・人・土のデザイン」の前編として、まず「蓄積に学ぶ」こと、そして「震災をアーカイビングする」ことをとりあげている。巻頭の赤坂憲雄インタビ…

マンモス

20111031 Mon. 前日のフットサルの疲れが脚に来た。非常勤で通っている武蔵野美術大は「芸祭」(正確には芸術祭だと思う)のため授業なし。夜は彰国社で本の打合せ。久しぶりに旧友に会う。 翌1101 Tue. ダメージ全身に及ぶ。筋肉が硬くなっているせいか夜は…

なんだか田町/エマニュエル・リヴァのヒロシマ/大学とは何か

昨日(2011.09.12)は朝から某審査委員の仕事をして、午後から学会の情報委員会、16:30から建築雑誌1月号のインタビューと、丸一日田町にいた。疲れた。でも今日のインタビューはよかったな。ネタバレはせぬが、お話をうかがったのは、遠野物語研究で著名で…

続・ティポロジアと「機能」の問題

2日間ほどネット接続が悪く疲れもたまっていたので前のエントリは尻切れとんぼになってしまった。あらためてポンペイを観察しながら書かれた二つの文章を短く引用してみよう。 しかし、たとえこれらのさまざまな状況的コンテクストを無視しても、住宅の本来…

ティポロジアと「機能」の問題

陣内秀信『都市を読む − イタリア』のなかで、僕は「ポンペイ」の章(p.186-210)がいちばん印象的だ。この章で陣内は、「住宅を取り巻く文化的・社会的経済的・歴史的・地理的なさまざまな状況がある。たとえば前近代住宅と近代住宅、古代住宅、プリミティ…

書評・牧紀男『災害の住宅誌 − 人々の移動とすまい』

『新建築住宅特集』2011年8月号に、牧紀男『災害の住宅誌 − 人々の移動とすまい』(鹿島出版会、2011)の書評を寄稿した。同書で示唆されている、日本の “戦後史(という激動)” と “災害(の空白)” とのある種の「めぐりあわせ」という問題について書いて…

「ただ在る」

牧紀男『災害の住宅誌:人々の移動とすまい』(鹿島出版会、2011)読了。初田香成『都市の戦後:雑踏のなかの都市計画と建築』(東京大学出版会、2011)も1/3くらいまで読んだ。まったく性質の異なる2冊だが、大局的には同じ思考空間のうちにある気がするし…

開かれない世界遺産?

高木博志先生(日本近代史:近代天皇制の文化史的研究/京都大学人文科学研究所)が『中央公論』2011年7月号にお書きになった「世界遺産の前に考えるべきこと:閉鎖的な管理をやめ古墳時代の天皇陵を公開・活用せよ」を送ってくださった(いつもありがとうご…

私たちは都市という形で組織化されている;ジェイン・ジェイコブス『アメリカ大都市の死と生』

昨日は学生たちと5時間半かけてジェイン・ジェイコブス著・山形浩生訳『アメリカ大都市の死と生』(鹿島出版会、2010)(”The Death and Life of Great American Cities”, 1961)を読むという贅沢な時間を持った。このところ胃が痛くなるようなことが多いが…

ニュー・オブシディアン

最近読んだ(↓)(一部読了に至らず)。 吉村昭『三陸海岸大津波』(文春文庫、2004) 河田恵昭『津波災害〜減災社会を築く〜』(岩波書店、2010) レベッカ・ソルニット(高月園子訳)『災害ユートピア―なぜそのとき特別な共同体が立ち上るのか』(亜紀書房…

「ポシェ」から「余白」へ

小沢明『「ポシェ」から「余白」へ』(鹿島出版会、2011)、一気に読みました。同書の魅惑的なキーワード群を並べてみませう。 オープン・ポシェ(open pocher)/アーバン・ポシェ(urban pocher)/ハビタブル・ポシェ(habitable pocher)/コムロンガン…

新建築住宅特集1年間のお仕事終わり。最後は近作訪問=塚田眞樹子/KOZUKI HOUSE

通常どおりの記事も書きます。最後の取材は塚田眞樹子さん設計の住宅でしたが、こちらのサイトでyoutube動画が紹介されていましたので埋め込みで。やっぱり内部空間の刻々と変わる重層性やマットな白色の質感を伝えることが意図されていますね。僕は反対に、…

1904年・1906年の台湾・嘉義大地震の被災状況の写真・スケッチ等

台湾も地震国。日本の植民統治時代では1935年の中部大震災がよく知られているが、ここでは1904・1906年の2度にわたる嘉義での震災について各報告書の画像をFlickrにあげる。これらは植民地支配(1895-1945)のなかでも早期に属すこともあり資料的価値が非常…

小さなピクチャレスク

昨年5月号より『新建築住宅特集』でエッセイ(前号感想)とコラム(近作訪問)の連載をやらせてもらっていて、今週末の近作取材(4月号掲載分)で1年間の仕事が終わるというところまで来た。届いたばかりの3月号では前号特集「小さな家」についての感想を書…

柵の隙間で館を建てた。

ロバート・カプラン著(松浦俊輔訳)『ゼロの博物誌』(河出書房新社、2002)を読んだ。「ゼロ」は、思考の抽象度が上がる(形式論理の世界へ一歩近づく)ときに介添え人として働き、同時にその論理世界のなかに自らの位置を獲得していく。というような歴史…

John F. C. Turner, HOUSING BY PEOPLE, 1976

《ジョン・ターナーの本はハウジングに関するものだが、同時に人々の生活の何が基本的なものか、どんな力が彼らを制御しているのか、そして彼ら自身は何を制御できるのかについて書かれている。コーリン・ワードが序文で言うように、ターナーは「ハウジング…